第二章 13-2
「リタ、私はオムイ様と話がある。悪いが先に行かせてもらうぞ」
そう言って、イザヤールは先を行ってしまった。
リタはというと、とりあえず星のオーラを世界樹へ捧げに行くことにし、ひたすら階段を上っていた。
「まぁリタ、随分たくさんオーラを集めてきたのね!」
弾んだ声がして振り向くと、リタの友達がいた。
「フェリス!」
桃色の髪に赤い瞳をした少女――フェリスは、リタ以上に派手な色合いをした天使である。リタより頭一つ分高い彼女は今、イザヤールの友人ラフェットに着いて勉学に励んでいる。
「早く世界樹のところへ行って捧げて来なさいな、今すごいことになってるらしいから!」
「うん、今ちょうど行くところ」
上機嫌にリタの背中を押すフェリスの様子から、もうすぐ世界樹が女神の果実を実らせるのだろうことが分かった。
「それにしても、もうすぐで女神の果実が実るって時にオーラを捧げられるなんて……やっぱりリタは運が良いのね! 同期の中では守護天使なんてあなたくらいだし、親友として鼻が高いわ」
フェリスの言う通り、同じ年代の中でリタ以外に守護天使ほどの地位の者はいなかった。
「そんな、お師匠のおかげであって私は別に……」
周りからも言われることだった。
「またあなたは謙遜ばっかり言うんだから。イザヤール様はあなたをお選びになったのよ? もっと自信を持つべきだわ、というか持ちなさい!」
実際、フェリスの言葉は真実である。が、弟子入りする前のリタはどうかと言うと……優秀とは言い難かった気がする。
確かに魔法や歴史に関する成績はかなり秀でていたのだが、武術はからきしだったもので。イザヤールに弟子入りしてからは彼自身、武術――特に刀剣――に抜きん出ていたもので、何とか人並み程度にはなったものの。
「うーん……。私的には、お師匠にはもっと相応しい弟子を取った方が良かったんじゃないかなと思ったわけで」
こんな、机に向かう方が似合う天使なんかよりも。
「全く、そういうところは変わらないわね! 昔はもっと酷かったけど」
「フェリス、その話題は勘弁して……」
自らの過去を黒歴史と評するリタであった。
向かいから悪意の満ちた声が投げ掛けられたのは、そんな時である。
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