第二章 08-1
「また貴様か! 城に入れるわけにはいかないと何度言えば分かる!!」
「またか……さっさと入れろって言ってるだろうが」
一体何があったのだろうか。兵士とアルティナが言い争っていた。
(なんで?!)
城の門で、まさに一触即発の展開。
そこには兵士二人とアルティナがいたのだが。その兵士の内の一人がアルティナに食ってかかっていた。
しかも、アルティナは全く相手にしていない様子。思いっきり「面倒くさい」と顔に書いてあった。
「うわー、何このヤバ気な空気!」
サンディは、リタの横で面白がっていた。
(サンディ、こんなとこで野次馬根性見せないでよ……)
頭を抱えているのは、リタだけでは無かった。
「またこの二人は……勘弁してくれないものか」
もう一人の兵士が、少し遠巻きに騒ぎの行方を見守っている。“また”と言うことは、以前からこんなことがあったらしい。
「あのぅ……どうしたんですか、これ」
控えめに尋ねると、兵士はリタを見て目を瞬いた。
「君は先程の……」
リタを門前払いした兵士だった。
「あの二人の知り合いか?」
「兵士さんの方は知らないんですけど。まぁ……戦士さんの方とはそんな感じです」
まだ出会ってから一日も経ってない仲であるが。
「そうだったのか。実は、ここ数日間ずっとこの調子でな、何とかならないものか。全くアイツは……職権濫用もいいところだ」
兵士は頭を抱え込んだ。出来るならリタも頭を抱えたいところだが、そんなことをしている場合では無かった。
「お、お二方……とりあえずその辺で……」
躊躇いがちにリタは仲裁に入る、が。
「だいたい、貴様のその不遜な態度はなんだ! 礼儀というものをわきまえろ!!」
「お前に言われる筋合い無い。礼儀をわきまえて欲しいなら、それなりの功績を上げるんだな」
「何だと!!」
二人は全く聞く耳を持たなかった。
「あーぁ、全っ然聞いてないし。どうするリタ? このまま戦闘ってゆーのは流石にいただけないってゆーかぁ……町中でそれはごエンリョしたいってゆーかぁ……」
サンディもこの状況は危ないと思ったのか、そわそわと辺りを意味も無く飛び回った。
「おい……いい加減その人に突っ掛かるのは止めないか、バレン」
頭を抱えていた兵士は疲れた様子で、バレンというらしい兵士を宥めた。
しかし、相手は全く聞かなかった。
「止めるな、俺はコイツと話してるんだっ!」
宥めたのが裏目に出てしまったらしい。逆上した兵士は腰にある剣の柄を握った。
「へぇ……やる気か」
それを見て、アルティナも柄に手をかける。
「ウゲッ……アイツらマジで?! こんなとこで流血沙汰なんてシャレになんないっつの!!」
「二人とも、やめて!」
「やめるんだ二人とも!」
三人の声は届かず(内、一人は聞こえなくて当然だが)、二人は剣を抜き今にも乱闘が起きる……かと思われたその時。
「やめなさいって……
言ってるでしょ!!」
リタは素早く、買ったばかりの扇を取り出し大きく一振りした。
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