第八章 08-2
「そなたら、旅の者か?」
事情を知るため、アノンちゃんなるものを探していた初老の男をつかまえた。たまたま通りかかったところを尋ねてみたのだが、この男、この国の大臣なのだという。どうやら城総出で女王のペットを探していたらしい。
「……実はな、女王様のペットである金色のトカゲをジーラという侍女が逃がしてしまったのじゃ。金色のトカゲ……アノンちゃんは女王様の心の友とも呼べる大切なペット……それを逃がしてしまったと聞けば、女王様は何と思われるか……」
もしこのまま見つからなければ、大変なことになる。大臣は苦悩に頭を抱えた。もし、ペットがいなくなってしまったと女王の耳に入ったのなら……怒り狂う女王の姿が目に浮かぶようだった。
「あのっ……もし良ければ女王様のペット探し、私達にも手伝わせていただけませんか?」
「何、手伝ってくれると申すか!」
「もちろんですわ。その代わりと言っては何ですけれど……無事に解決させられたのなら、女王様に会わせていただきたいのです」
「女王様に? それはまたなぜ……」
大臣は不可解に眉を寄せた。カレンが更に事情を説明する。
「私達、金色の果実を探して旅していますの。女王様が手に入れたと聞いたので、それで……」
「ふむ、なるほど……確かに女王様は、つい先日黄金の果実を商人から受け取っておったか……」
大臣は先日のことを思い出し目を細めた。その言葉で、果実は女王が持っているとほぼ確定した。また、女神の果実が他の人物の手に渡ったわけではないようで少々安心できたものの、まだ気を緩めるのは早い。
大臣は顎に手を当てて考え込んでいる。やがて、一つ頷くと、了承してくれた。
「よかろう、ペットを無事見つけることの出来たあかつきには、お主らを女王様に会わせてやっても良い」
「あ、ありがとうございます!」
何とか約束を取り付けることが出来た。リタは大臣に大きくおじぎをすると、さっそくトカゲ探しに向かおうとして……。
「そうじゃ、旅の者よ」
大臣に引き留められた。別方向に向かいかけた爪先がつんのめりそうになる。転びかけたのは本日二度目であった。
「侍女のジーラだが、あの者もトカゲを探しているはずじゃ。詳しいことはジーラに聞くのが良かろう」
「ジーラさん、ですか……」
「肩くらいまでの黒い髪をしておる、そなたと同じくらいの歳の侍女じゃ。少しおっちょこちょいな部分があっての……それでついうっかりトカゲを逃がしてしまったらしく……」
呆れにも似た溜め息が大臣から漏れる。どうやらその侍女がうっかり何かをしでかしたのは初めてではないらしい。
……それにしても、それに似た人物をついさっき見かけたような気がするのだが。リタ達は三人とも、目を瞬かせた。大臣には見えないが、サンディも首を傾げている。
「リタくらいの年齢の方ですのね……」
「で、抜けているところがあると」
カレンとアルティナがぽつりと呟く。
「あれ? それって、もしかして……」
さきほどリタとぶつかった、あの侍女のことではなかろうか。
その後、四人(?)の予想は確信へと変わることになる。
(アノンちゃんを探せ!)08(終)
―――――
●ォーリーを探せ!……みたいな←
[ back ]