番外編 A HAPPY NEW YEAR!!
「こんなとこにいた、アル!」
「……リタ?」
どうしてここが分かったのだろうか。ルイーダにはこの場所のことは話していないはず、ならば……
「えへへ、デュリオさんに聞いてきちゃった」
……やはり。
どうやら、あの口の軽い兄貴分がまたベラベラと喋ってくれたらしい。とりあえず後でシメることにしよう。
心の中で決心すると、リタは幹や節に手をかけ足かけ木によじ登ろうとしていた。が、上手くいかず苦戦していている。内心ハラハラしながら見守っていたが、いい高さまで登ってきたところでずり落ちそうになって、慌てて手を伸ばしていた。全く心臓に悪い。
「ったく、何やってんだお前は……」
相手の手首を掴み引っ張り上げると、思いの外容易に持ち上げることが出来た。予想以上に軽い。
「め、面目ないです」
「全くだ」
返す言葉が無いのかリタは「うぐ、」と言葉を詰まらせた。
別に腹を立ててるわけでも無いし、更に縮こまりそうなので、それ以上言うのは止めておく。自分はそこまでサドじゃない……と思う。
「わぁ、いい眺めー」
この木の上からは、カラコタが一望出来た。今は夜だから、明かりがポツポツと見えるだけだが、昼は町の端に位置する橋まで見えるのだ。
「アル、ルイーダさんがアルティナはいつもお正月はどっか行なくなっちゃうって残念がってたよ」
「…………」
どうやら口が軽いのはデュリオだけではないらしい。
「いつも一人で日の出見てるって聞いてね……来ちゃ、迷惑だった?」
「別に、気にしない。一人で見たいわけじゃないんだが……初日の出はここで見ると、約束したんだ。アイツと」
今は亡き、悲惨な運命を辿った相棒。ここで初日を一緒に見たのは一度きりだった、けれど。約束したから。
『キレイだね……来年も、ここで初日の出を見れたらいいなぁ』
『だったら、また来ればいいだろ来年』
何で来年来れないみたいな言い方をするんだ、と言うと相手は苦笑でもって返した。……もうここに来れないことが分かっていたのかもしれない。
『……そう、だね。じゃあその時はまた一緒に来てくれる?』
『当たり前だろ……ってか俺は毎年ここで見てんだよ』
『あ、そうだったね』
何がおかしいのか、くすくすと笑う。何で笑うんだよ、とつっけんどんに聞いたけど相手はただ笑うばかりで。
『じゃあ……約束だよ、アルティナ。来年も、これからも、また一緒にここに来て初日を見よう』
「……約束だと言った本人が約束破るとか、どういう了見だよ」
そして、約束だと言っておきながらそれを破る気満々だったアイツは、今さらだがかなり性格が悪い。
きっと、死んでもアルティナは毎年毎年この場所に来るだろー、とか思っていたに違いない。というか実際来ている。
死んでしまったアイツには、一生勝てそうに無かった。
「……じゃ、今年からは私も一緒に見る!」
ずっと黙っていたリタが座るなり、いきなりこう宣言した。
「……は?」
「だから、私は毎年ここで初日を見るって言ってるの。止めてもムダだからね! 羽とわっかが復活して天使界に戻れたとしても、毎年ここに来るから!」
リタの意志は固い。
この優しい天使は事情を知ってからというものの、それに関することに何が何でもとことん付き合うと決めたらしい。
旅に同行してくれたお礼、とか思っているのかもしれない。別に、そんなことする必要は無いと思っているのだが、なかなか言い出せなかった。というか、言いたくなかった。
「なるほど、つまりお前は俺と二人で年を越したいと」
「んなっ……何もそこまで言ってるわけじゃ……!!」
「そうなるだろ実質的には」
「そ、そそそうかもしれないけどっ……。っていうかアル、何だか最近意地悪くない?!」
「気のせいだろ」
さらりと言ってのける。と恨めしそうに見上げてくる相手に、自然と笑みがこぼれる。
……案外に楽しいかもしれない、と思う自分はやはりサドなのだろうか。
「……あ、日の出」
「えっ、本当?!」
東のビタリ山の端から漏れる、年明けの光。
じわじわと昇るそれを見守る人間と天使。
「アル、明けましておめでとう!……って人間界では言うんだよね?」
「ああ、まぁ……おめでとう」
おめでとうとか言うの、いつ以来だ。
そう思いつつ、来年も再来年もこの場所に付き合ってくれるらしい天使に感謝をしながら、日の出を見送った。
A HAPPY NEW YEAR!!(今年もよろしくお願いします)
―――――
なんかもう、書いてるうちに二人の距離感が全く分からなくなったんだぜ!←
ていうか、セントシュタイン〜カラコタって、船使えばギリギリ一日で行けるよね?! 行けないとアルティナがどうやってカラコタまで行けたか説明出来なくなっちゃうわ!ってなことになるんですが……。
あ、キメラのつばさがあったのでした←
何はともあれ、今年も星屑ラプソディと冬生をお願いします!
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