番外編 新年までのカウントダウン(前日)2
「ま、そんなこんなでリッカが来るまで店が潰れなかったのは、アルティナのおかげでもあるのよね〜」
アイツったら、女受けが良いからー。
どこか遠い目をするルイーダ。リタとリッカはどうリアクションを取ればいいのか分からず、とりあえず苦笑いをしておいた。
「そ……そうなんですか」
「なんて言うか……大変だったんですね……」
ルイーダも、アルティナも、この宿屋も。
まぁ一番大変だったのは、とばっちりを食らったアルティナかもしれない。
「それに、アルティナってば最初は本当に誰にも心開かなかったし。だからパーティなんて組めるはずもなくて。でも、ね……リタとだったら上手くいくんじゃないか思ってたのよ、私」
「え……私ですか?」
ここに来てのカミングアウト。だからパーティ組ませる時にやや強制的だったのか、とセントシュタインに来たばかりの頃を思い出す。
「あ、でも分かります。リタって誰とでも上手く付き合えそうですよね。人を引き付ける能力があるな……って」
「り、リッカまで……」
二人とも、買い被りすぎ。
自分はそんな大層な人間ではないと否定するも、「リタは謙虚すぎるわ」としか返って来ない。
「リター、ちょっとよろしいかしら?」
宿のドアが開くと、そこからカレンがひょっこり現れた。隙間から、少し寒い風が室内に吹き込む。
「カレン、どうしたの?」
「少し、お買い物に付き合ってくださらないかしら」
カレンの買い物に同行……ということは、イコール“ルーラ”が必要ということだろう。
「分かったー。じゃ、ちょっと待ってて!」
いそいで台ふきを片付け、コートを羽織る。正月だからか、外は一層寒くなっていた。
「あっ、リタちょっと待っ……」
「すみません、ちょっと行ってきまーす!」
制止も虚しく、リタはさっさと扉の向こうへ消えてしまった。ルイーダは口惜しそうに指をパチンと鳴らす。
「チッ残念だわ……今年はアルティナをリタに引き留めてもらおうかと思ったのに」
「ルイーダさん……」
「お正月、アルティナがいないと私が詰め寄られるのよ、女の子達に!」
毎年、なぜアルティナがいないのかと責められるのはいつもルイーダだった。というか、正月に問わずあらゆる時節あらゆる時間帯に責められるのだが、騒がれる当の本人はそれを承知の上で姿を見せないのだろうか。
確かにヤツを酒場の名簿に登録してからは客が増えた。しかし、それと共に心労も増えた。
自業自得と言われればそれまでかもしれないけれど。
「本当に……大変なんですねルイーダさん……」
前言撤回。ルイーダが一番、大変な思いをしているのかもしれない……。
あと一日!(もう少しで年が明けちゃいますねー)
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