第七章 07
「こちらなどいかがでしょうか。破邪の剣といって、値は貼りますが威力は強力で……」
「却下」
スッパリと断りながら、視線だけが店先に並ぶ商品眺めている。時々、店主が勧める剣にチラリと視線を移すこともあるけれど、今のところ芳しい反応は引き出せてない。理由は……言わずもがなその性能にあるのだが。アルティナの態度にその武器屋の店主は腹を立てる……かと思いきや、更に張り切って武器を薦めだした。職人魂に火でもついたのであろうか。とりあえず剣に疎いリタはついて行くことが出来ず、隣で(店主が)白熱している光景を傍観しているしかないのだが。
それにしても、本当に豊富な品揃えである。
(数はある、けど……アルには向かないのかな)
バトルはまだまだ続く。いつ終わるのだろう。というか、自分は一体何をしにここへ。
まず、アルティナの剣が見事なまでにぶっ壊れた。それには仕方ない事情があるのだが、まぁ剣をどこからか調達しなければならなくなった。先を急ぐことにした一行はサンマロウへ。カレンは用があるとかでリタとアルティナの二人で武器屋へ行くことになり、今に至る。
することもないので店内をグルリと見渡す。剣だけでなく槍、斧、杖なども並んでいた。ふと、扇があるのにも気付き目を向ける。
烈風の扇、一つ3200G。
「お客様、お目が高いですな。そちらの扇は……」
びくっと肩が跳ね上がった。すぐ後ろでバトルを繰り広げていたはずの店主がいきなり扇の説明をし出したのである。心臓に悪い、のもあるけれど……剣はどうなったのだろう。
と、思ったらすでに決まっていた。もう少し続くかと思ったら、結構早めに決着がついたらしい。
「あ、決まった? じゃあ……」
出ようか、と言おうとしてアルティナが口を開いた。
「お前はどうする」
どうする、とは?
一瞬理解出来ず、目を瞬いた。しかし、すぐに思い至る。
――そういえば、店主が扇の説明をしていた。
「わ、私は良いよ。元から買うつもりはなかったし……」
その言葉に、しかしアルティナは溜め息混じりで答えた。何だか呆れられているような気がしないでもない。
「よく言う。あんな熱心に見てたくせに」
何をと言われたら、扇を。ただ、本人にはそんなつもり微塵もなかった。
「えっ?! いや私そんなつもりじゃ……!!」
ない、と言うよりもアルティナの方が行動が早かった。
「すいません、コイツにもこれを」
「ありがとうございます」
店主は営業スマイルで、あれよあれよと扇が自分の手に。その間は呆然と、何も口が出せなかった。
決して、安いとは言えない値段だったのに。
「私のはまだ使えたよ……?」
店を出て不満というか疑問を投げ掛けると、またも溜め息をつかれた。本日二回目。……やっぱり呆れられている気がする。
「お前な、アイツが何のために二人で武器屋へ行かせたと思ってんだ」
アイツ……カレンのことか。文脈的に。
そういえば、カレンの去り際がやけに強引だなと思っていた。
「……あれ、私のも元から買う予定に入ってたの?」
「まぁ、そういうことだ」
そうだったのか。知らなかった。
率直にそう言うと、更に呆れの色が濃くなったような気がした。いや、それよりも。
「お前らしいな」
でも、普通気付かないと思うけれど。よほど勘が良くない限り。
二人して、ふと口元が緩んだ。
(この時すでに事件は始まっていた)07(終)
―――――
たまーに武器調達とかしてみる。書いてないだけで、ちゃんと彼らは彼らで行く先々で色々調達してる……はず。
とりあえずアルティナが買ったのはプラチナソードのつもりです。
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