天恵物語
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間奏U 15

「え、フィウメさんて男の人だったんですか?」


翌日。晴れやかな青空広がる空の下。
衝撃発言をかました銀髪少女を、仲間二人は凝視し、盗賊団の現頭領は吹き出した。


「お前……女だと思ってたのか? アイツが?」


「リタ、フィウメという名前は男性の方の名前ですわ」


言外に「何をどうしたらそういうことになった」と示唆され、かなりいたたまれない気持ちになった。穴があったら入りたいとは、こういう時に使うのだろうか。


「……デュリオさん」


「な、何でしょーかね」


今も笑いを堪えるデュリオに一つ確信する。確信犯か!


「デュリオさんが紛らわしいこと言うからーー!!」


デュリオによるフィウメの容姿に関しての発言はこうだ。

“栗色の髪を後ろで一つに括っててさ、とにかく色白で華奢なヤツ”

……しかし、ここに“男としては”と付くのが正解。
どちらにせよ、男に付けるべき形容ではないのは確かであった。


「いやまさか、最後まで話聞いて男だと思わないとは思わなくて……ぶふっ」


しかも、笑いを収めた後のデュリオの発言が、こうだ。


「リタ……お前って鈍感なんだな!」


「正面きって言うことじゃないです!」


謝意のカケラも無い。


「まぁそれがリタだからな」


「ですわね」


「二人まで納得しないで……!」


珍しくアルティナとカレンの意見が一致するが、こんなところで一致しなくても良いじゃないか、と思う。


「まぁ頑張れよ。あー何だっけ、七つの果実が揃ったら願いが叶うんだっけか?」


「…………ちょっと、違います」


ただ、果実を回収するだけである。
確かに、天使の願いは叶うのかもしれないけれど。


「そうだ、あとアルティナ、ちょっと」


「何だよ」


デュリオから手招きされたアルティナは肩を組まれた。女性陣から少し距離を置き、潜めた声でデュリオが言ったことといえば……


「お前、なかなか……というかとびきり良い子見つけたな。外も良くて中も良いとか滅多にいねぇんだからな、くれぐれも……」


「余計なお世話だ」


最後まで聞かず、容赦無い力で叩く。べしっ、と良い音がした。


「ど、どうしたんだろ」


「……大方予想はつきますわ」


何かを言い合う男二人を、カレンは半眼で見つめていた。呆れているのは明らかである。


「ねぇ、カレンって男の人が嫌いなの……?」


ずっと前から気になってたことがある。果たして、カレンと気の合う人はいるのだろうか……。


「あら、私だって普通に接する殿方くらいいらっしゃいますわよ。兄もいますし」


「そうなの?!」


「しかも三人も」


「ええぇ……」


意外な事実が発覚した。


「おい、そろそろ行くぞ」


たアルティナ(なんだか少し不機嫌?)が戻って来ると、カレンが「貴方が待たせていたのではなくて?」と毒づく。もう日常茶飯事になってきた。


「えーと、じゃあ……デュリオさんの助言通り、ビタリ山に行ってみたいと思います」


話を聞く限り、どうやら今女神の果実を持っているのは彫刻家のお年寄りらしい。――まだ果実を食べていないことを祈るばかりだ。


「ありがとうございました、デュリオさん」


「ああ、気をつけてな。……アルティナは体弱いから体調崩すなよ。無理するんじゃないぞ?」


「余計なお世話だっつってんだろ」


アルティナの保護者のようなデュリオに思わず笑みがこぼれた。


「あと……、たまにはカラコタ橋にも帰って来いよ。責任感じてんだか知らねーが、俺達そんなこと気にしてねぇんだから」


アルティナの、カラコタ橋に戻りたくなかった理由。
親しい友人が亡くなった、ということもあるだろうが、一番の理由はカラコタの皆に合わす顔が無い、と言ったところではないか。


「いちいち、うるせーんだよ、お前は……」


憎まれ口を叩きながらも、その表情はいろんな感情が見え隠れしていた、泣き出しそうな笑顔だった。


「さぁ、行こうか」


ビタリ山へ。















(過去を振り返らずに)
15(終)
間奏U終了




―――――
お、終わった!
オリジナル盛り込んだせいか達成感が……!!
次は、石の町ですね。


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