天恵物語
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間奏U 14

それから、炎の中で茫然とするアルティナをデュリオが引っ張り出すように避難させた、らしい。
火事はまもなく消し止められ、夜が明ける。
カラコタの再建が始まった。
もともと旅人や商人の通行の要衝であったカラコタの橋は、すぐに建て替えられた。木造よりも頑丈な石造りに変更され、今に至る。簡素な住居を建てるのも、そう時間はかからなかった。


「あの時の出来事で亡くなったは三人。頭とフィウメと、あと……エリーヌ」


「え……」


「デュリオを庇って死んだ。……相手が、多過ぎた」


デュリオの悲嘆に暮れた顔。エリーヌの安らかに眠る顔。
……今でも、忘れられない。


「皆が元通り暮らせるようになったら、盗賊を辞めて、カラコタ橋を出た。デュリオには……まぁ、かなりしつこく止められたが」


あれからデュリオは盗賊団の頂点に立ち、義賊を名乗るようになった。誰も殺さない、立場の弱い人間に救いの手を差し延べる、そんな一団を目指して。


「それでセントシュタインに来てルイーダに拾われたわけ、だ、が……」


隣を見てギョッとする。今まで大人しく話を聞いていたかと思ったら、ボロボロと涙を流していた。


「……リタ、」


「ご、ごめんなさい……」

何にも知らず、つらい話させて。
溢れ出す涙を拭い、堪えようとするも、努力虚しく涙は次々に溢れた。


「何で、お前が泣くんだよ……」


『…………もう……何で、君が、泣いちゃうかな』


あの時のフィウメの気持ちが、少し分かった気がする。
躊躇うように華奢な肩に触れ、そして抱き寄せる。


「あ、アル……」


「……しばらく、」


このままで。

最初こそうろたえていたものの、震える背中、張り詰めた心を察すれば、何も言えなくなった。
突き放すことなんて、出来ない。
おずおずと背中に手を回せば、更に抱き込む腕に力が入る。
まぶたを閉じれば、また一筋涙が頬を伝った。















(夜が、更けていく)
14(終)




―――――
山場越えましたー。


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