間奏U 10
「しっかし、まぁ……頭来ねぇなー」
ついでに言えば、カラコタに様子を見に行かせるためパシらせたアルティナも、なかなか帰って来なかった。
「全くよねーっ、人との約束破るなんてサイテー!! 絶交!!」
「いや、おま……そこまで言うか?」
サンマロウの街から少し離れた木陰に、エリーヌとデュリオはいた。
今回はムーンダイヤモンドとか言う貴石を手に入れるとかで、貴族の屋敷に乗り込む予定だったが、頭が来ない。
「ま、もう盗んできちまったがなー」
「さっすがデュリオよね! もうデュリオが盗賊団のお頭やれば良いと思うわ〜」
「お前……頭が聞いてたらとんでもないことになるぞ、俺が」
「本当のことだもん」
はぁ……とデュリオは溜息をついた。「お前が盗賊団の頭になれば」と言われたのは、何もこれが初めてというわけではない。
「それにね、今のお頭はちょっとやり過ぎだわ。この前も、目撃されたからって殺すことないじゃない。いくら足が付くからって……」
「それは思うが……頭は貴族とか金持ちを嫌ってるっつーか、憎んでるからなぁ」
過去に何があったかは知らないが、盗賊団のリーダーの金持ちへの嫌い具合には相当のものがあった。
「そういえば、狙うのも成金の屋敷ばっかよね」
「そうだな。特に集中的に狙う一族がいたっけなぁ」
「そうなの? 何か恨みでもあるのかしら?」
「うーん、確かシュバルト……じゃねぇな。名字が何だったっけか……」
「ああ、成り上がりの下級貴族ね。セントシュタインの」
「そう、それ……」
デュリオの言葉は、途中で途切れた。
周りを囲まれていると、気がついたのだ。
「追っ手なの? それにしては数が多過ぎると思うんだけど……」
「もしかして……頭が来ないのと関係してたりするか? さっさと退散すべきだったな」
二人は得物であるナイフを取り出し、身構えた。
「気をつけろ、こいつら魔法使いだ」
「分かってるわ」
直後、かなりの数の敵が姿を現した。
ムーンダイヤモンドを盗み出す際のワナだったのか、それとも盗賊団を狙ってのことだったのか……それは現時点では分からない。
とにかく、今はここをどうすれば逃げ延びることが出来るのか。それを考えるのが精一杯だった。(消えたお頭と謎の刺客)10(終)
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いよいよ核心に近づいてきた……かも。
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