間奏U 04-1
カラコタ橋は町並みこそ変わってしまったものの、他には昔と何も変わっていなかった。
橋の上から見渡し、それを再確認すると、思わず溜息が漏れた。
「……当たり前か」
自分が橋を出て四年。それまでの十二年間だって全然変わらなかったものが、劇的に変わるわけもない。
いや、変わったか。一度だけだったけれど。
五年前、見る影も無くなったカラコタ橋。
治安は悪いと言われるが、カラコタ橋は誰でも受け入れてくれる。
浮浪者、孤児……没落した貴族だとしても――。
それが、裏目に出たのだった。
「……アル?」
声のした方向を向くと、橋にかかる梯子を上ってきたリタがひょっこりと顔を出していた。
「あのね、デュリオさんが早く戻れって。ずっと帰って来ないから心配してたよ?」
気付けば日も暮れかけている。
とは言え、ずっとここにいたので別に心配されるようなことはしていないのだが……。
「…………あ、」
梯子を上りきったリタが、何かに気が付いたらしく小さく声を上げた。
橋の向こうから青いフードの少女が歩いて来る――。
そして、少女は橋から町を眺め、ガッカリしたように溜息をついて首を横に振った。
「……いない。この町にも」
「あの人って、確か……」
天の箱舟に向かう途中に見かけた人だ。
しかし、アルティナは見覚えが無いのか、怪訝そうにその人の様子を見ていた。
「……! まさか……」
「えっ……」
リタに駆け寄り、顔を覗き込む。
そのことで、フードの中に隠れていた顔をはっきり見ることが出来た。
茶髪に、澄んだ水色の瞳――。
「……違う。違うわ」
再度、溜息をついて首を横に振ると、すれ違い、その人は橋の向こうへ去ってしまった。
すれ違いざま、吐息と共に一言残して……。
「どうかしてる……旅人を天使と見間違えるなんて」
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