第一章 04-2
「リッカ!」
「あらリタ、それに……ニードも一緒なの? 一体どういう風の吹き回し?」
なぜにこの組み合わせなのか、とリッカは不思議そうに首を傾げている。
「いやぁ、いろいろ話してみたんだけどよ、コイツなかなか良いヤツじゃん! てことで親睦を深めるためにちょっくらコイツ借りてくからよろしくな! いくぞリタ!!」
「あ、う、うん!」
「えっ、ちょっとニード!?」
最後まで言ったか言わないかくらいのところで二人はすかさずリッカの家の外へと飛び出した。背後にリッカの慌てる声が聞こえたが、構わず走る。
「上手くいったな!」
「上手くいった……って言えるのかな……」
「何だよ、俺の完璧な作戦に文句でもあんのかよ?」
完璧な作戦というか、ただ言い逃げしてきただけのような気がするのだが。
「えっとまぁ、これで一応峠には行けるかな」
峠から帰ってきた後が怖いが。
「よし、じゃあこれから峠に向かうが……準備は良いんだよな?」
「当然!」
「……じゃあ行くか」
ニードが「こいつ、だんだん敬語を使わなくなってきたな……」と内心思いながらも村を出ようとした時だった。
「あれ? 二人とも、どっか行くの?」
男の子の声が二人を引き留めた。
そこにいたのは、まだまだあどけない村の少年。……ニードに軽い天罰を願ったあの少年である。
「うん、ちょっとそこまでね」
リタが峠の方角を指差すと、その小さな男の子は「あっ」と声を上げた。
「そういえば僕、あっちの方に何か光るモノが落ちてくの見たんだ」
「「光?」」
流れ星か何かだろうか。最初はそう考えたリタだったが、男の子の次の言葉によってどうやら違うらしいことが分かった。
「地震の時に落っこちてたんだ。でも誰に言っても信じてくれないんだよな〜。ねぇ、兄ちゃん達で見てこれない?」
これに対する二人の反応は、正反対だった。
「はぁ? お前それ、流れ星とでも見間違えたんじゃ……」
「分かった、任せといて!!」
「って、おい!」
大きく胸を張るリタに、げんなりとした顔を向けるニード。
「お前……簡単に安請け合いすんなよ……」
「だって、気になるし……。もしかしたら……」
地震と同時ということは、天使界から落ちてきたモノかもしれない……そう言いかけ、慌てて口をつぐんだ。
(あ、危ない……)
うっかり口を滑らせるところだった。
「もしかしたら……何だよ?」
ニードと男の子は、いきなり黙り込んだリタを見て首を傾げた。
「も、もしかしたら……流れ星が落ちたのかもしれないでしょ!」
リタが意気込むのには、理由があった。
(天使界に、帰れるかもしれない……)
帰れなくとも、天使界の誰かと遭遇する可能性は高い。
「よーし、行こうニードさん! 出発!!」
「なんでそんなに張り切ってんだよ、お前……」
この話を持ち掛けた本人よりも張り切りながら、リタは東の峠への道を進んだ。
(土砂崩れの峠へ!)04(終)
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