天恵物語
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第一章 05

「うーん、峠って結構遠いんですね」


しかも、行く先は見渡す限り森ばかり。


「田舎なめんなよ。セントシュタイン城へ行く手段は徒歩しかねぇし、今じゃ峠の道を使わなきゃ行き来出来ないんだからな!!」


それ、偉そうに言えるものではない……そう思うのはリタだけだろうか。


「じゃあ、尚更あの土砂崩れをどうにかしないと」


「そうなんだよ、何とかしねぇと……って」


ニードの動きがピタリと止まった。


「リタ、早速魔物だ」


「魔物って、あれ……」


モーモンだった。


「え、あれを倒せって言うの?」


指差すリタの手は少し……いや、かなり震えていた。


「あんな可愛いのに……!!」


見た目も動きもふわふわしているモーモンを倒すのは、ある意味難しそうだ。


「いや可愛いって、おま……」


「こっちおいで〜」


「何引き寄せてんだよ?! ってマジで来たし!!」


モーモンは、ふよふよと飛びながらリタの元へやって来た。


「ほらー、全然大丈夫だよ」


「な、なんだ……。ったく驚かせるなよな」


モーモンを撫でるリタを見て安心したからか、若干及び腰なニードがモーモンへ一歩近付いた……次の瞬間。


『シャーッ!!』


モーモンは、ニードに威嚇した。


「うわっ……」


「……やっぱり、あんまり大丈夫でもないみたいだね」


リタには大人しいが、ニードには狂暴なモーモンだった。


「なんだよ、こいつ! 見た目可愛くても性格は最悪じゃねぇか!!」


『シャーッ!!』


またもやモーモンはニードに威嚇した。


「こいつ、俺の言ってること分かんのか?! つーか、威嚇してる時のこいつの顔マジで恐ぇ!!」


牙剥き出しのモーモンは元の造りが可愛いだけあってか、恐さ百倍だった。


「言ってることは分からなくても、自分の悪口を言われているのくらいは分かるんじゃないかなぁ……」


憶測に過ぎないけれど。


その後も、遭遇したモーモン達はなぜかニードを威嚇し続けたのだとか。















(モーモンなんて大嫌いだ!!)
05(終)




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