天恵物語
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間奏T 04-2

リタが箱舟で天使界へ戻ると、まず長老のオムイが出迎えた。
最初は驚かれ、いろいろとまくし立てられたが、すぐに落ち着きを取り戻したオムイはリタを歓迎してくれた。


「リタよ。よくぞ無事天使界へ帰ってくれたの。さぁ、おいで。地上で何が起きているのか、私達に教えておくれ」


「はい、オムイ様……」


リタは、地上に落ちたときに天使の翼と光輪を失ったことや、大地震により、人間界のあちこちで異変が起こっているらしいことを伝えた。


「……そうか。あの時の邪悪な光は天使界ばかりではなく、人間界までも襲っていたのか。リタも覚えておろう。女神の果実が実ったあの日。地上より放たれた邪悪な光が天使界を貫いた。天の箱舟はバラバラになり、そして……女神の果実全てが人間界へ落ちてしまったようなのじゃ。リタ、おまえとともにな……」


天使界から人間界に落ちた出来事は、まだ記憶に新しい。
凄まじい轟音に、黒い稲妻。豪風に煽られ、浮かぶ自分の身体。
あの時、師匠の手を掴むことが出来ていたら。


「あのあと地上に落ちてしまった天使や邪悪な光の原因を探すため、何人もの天使が地上へ降りた。じゃが……リタ、お前の他は誰も戻ってこないのだ。お前の師であるイザヤールでさえ……」


「そんな……お師匠まで」


危機的な状況に、次の言葉を発することが出来ない。天使達は一体、どこへ行ってしまったのだろうか。


「ともあれお前だけでも戻ってこれて良かった……。お前は世界樹の元へ行き、戻れたことを感謝し、そして祈りを捧げるのだ。もしかしたら、世界樹のチカラが失われた翼と天使の光輪を蘇らせてくれるかも知れんぞ」


青ざめるリタを慰めようと、オムイはリタの頭に手を置いた。その温かさに思わず涙が出そうになる。


「……ありがとうございます」


お辞儀をすると、リタはオムイの言う通りに世界樹へと向かった。


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