今日、私は一人だった。自分で言うのもなんだけど、すごくすごく珍しい。
いつもなら大体休日は公平と一緒で、朝からどっちかの家に集まって出掛けたりダラダラしたりしてる。
けど、今日は公平の親戚の法事とかで、公平は蓮乃辺市に行っていて、弟も訓練で本部。残念ながら太刀川隊の面々とも都合が合わなかった。とても残念です……

家にいても寂しくなっちゃうから、服を着替えて外に出てきてしまった。欲しいものがある訳じゃないから、適当にぶらぶらするつもり。

とか言っていたら、見覚えのある顔が前方50メートルの所に見えた。無駄に背の高い、姿勢のいいあの姿は。
私に微塵の興味もない!公平の弟子!二宮さんだ。
二宮さんの周りには、なんだろうあれ。女子が3人。もしかしてナンパだろうか。二宮さんの眉間にふかーい皺が見えるもの。
私、視力結構良いんだよね。

見つかると面倒くさそう。と、脇道に逃げようとした。が。
あ、目が合っちゃった。めっちゃ見てくる。ビシビシ視線を感じる。

「さあら」
「うっ」
「遅い」
「えぇー」

目を逸らしてしまおうとしたら、それより早く名前を呼ばれた。ねぇ、二宮さん。初めて名前呼ばれましたけど?私の下の名前知ってたんですね?!初めてそんな優しげな声が私に向けられた気がしますけど?!
そんな二宮さんの優しげな声に釣られて、二宮さんを囲んでいたおねーさんたちの視線がこちらに向けられた。激しい敵意が刺さる刺さる!カゲさんなら既にブチ切れレベルですよ?

そしてそのおねーさん達の後ろで二宮さんの口が動く。
え、なに?

た、す、け、ろ

えー……めんどくさいなぁ。
とはいえ、二宮さんの目が必死すぎて。
しょうがないなぁ。あとでご飯奢ってもらお。

「お兄ちゃん!ごめんね?待った?」
「ああ」
「えーっと、お姉さん達だれ?」

愛想の良い雰囲気を作り出して、二宮さんの腕に絡み付く。自分の顔がそれなりに整ってるのは一応自覚してるから、わざとらしく二宮さんを囲む人達に笑顔を向けた。

「お兄ちゃんと一緒に買い物するんだ。もう行ってもい?」

怯んだ隙に二宮さんの腕を強く引いて、お姉さん達の包囲網から抜け出す。
すると、すぐに二宮さんからほっとしたような息が吐く音が聞こえた。

「もーあれくらい一人で何とかしてくださいよ」
「助かった」
「うわ、珍しい。二宮さんに素直に謝られたの初めて」
「礼に何か食わしてやる」
「わぁい、焼肉行きましょ!」
「こんな時間からか?」
「え、だめですか?」

はぁ、というため息は多分OKってことなんだろう。無言のまま歩き出した背の高い背中に、私もゆっくりと着いて歩き始めた。

あ、公平に連絡しておこう。

『二宮さんと焼肉行ってきマース』

その後、高級焼肉に連れて行ってもらっていたら、公平から鬼電がかかってきていて、大騒ぎになったのは別のお話。

二宮さん救出大作戦


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