「さあら?どした」

日曜の朝っぱらからかかってきた電話に珍しいなと出る。
相手は言うまでもなくさあらで、朝から出かける予定だったからあと一時間もすりゃ合流だし。何かなければ電話なんてかかってこないはずだった。
ということはなんかあったってことか。

「こうへいー。今日のお出かけなんだけど」
「ん。どうした?」
「生理なっちゃって、すごい調子悪いから無しでもいい?」
「あー分かった。大丈夫か?」
「家で休んどくから平気だと思うー」
「無理すんなよ」

そういやそろそろそんな時期か。女子は大変だよなぁ。
ってことで暇になった俺は、ちょっと考えたけど結局予定通り家を出ることにした。
手早く携帯と財布をジーパンのケツに突っ込んで、と。

「あれ、公平でかけんの?」
「おー」
「さあらちゃんと?」
「さあらんち行くの。生理痛で死んでるらしいから」

玄関で今起きましたって感じの姉貴に捕まる。髪の毛ぼっさぼさじゃん。

「あー。お腹冷やさないようにしたげなよ」
「おー。んじゃ行くわ」
「はいはい」

ひらひらと手を振って見送られて玄関を出る。
家事とかもしんどいだろーし、適当にコンビニで食い物とか飲み物買ってくか。
あ、薬とかいらねぇのかな。……電話しよ。

「さあら?」
「んー?」
「薬は?」
「切れちゃってて」
「分かった。いつも飲んでるやつな」
「うんー。来てくれるの?」
「おー。今お前んちの近くのコンビニのとこらへん。なんか食えそう?」
「あまいのたべたい」
「ん」

というわけで、コンビニでさあらの好きそうなフルーツ系のケーキとか、ゼリーとか買い込んで。ついでに薬局にもよって、あいつがいつも飲んでる薬を買った。
あー、俺ほんといい彼氏だよなぁ。



合鍵で鍵開けて、部屋の中に。勝手知ったるってことで、そのまま家主の許可も取らずにずかずかとさあらが寝てるだろう部屋に向かう。
さあらの部屋の扉を開けると、ベッドの上に丸い膨らみがあった。

「寝てんのか」

ベッドの脇に上着を脱いで荷物を放り出すと、もそもそと布団が動いた。

「おきた」
「ん、大丈夫か?」
「んーおなかいたい」

布団の隙間から出てきたさあらの頭。近くに座り込んで乱れた髪の毛を手櫛で整えてやれば、安心したみたいに笑った。くっそかわいいな、これ。

「とうやは?」
「合同訓練だからいいから、いきなっていったの」
「あー。なるほどな。薬買ってきたし、ちょっとでもなんか食え」
「うん」

いつもよりゆっくりした動きで、布団から脱出したさあらは、体調悪いときの癖でいつも以上に甘えたがる。今もよいしょよいしょと言いながら俺の足の間に座り込んだと思ったら、背中を俺に預けてくる。甘いさあらの匂いと、あったかさがたまんなく心地いい。

「ケーキなら食える?」
「うん!」

レジ袋の中からカップケーキを出してやり、スプーンのビニールも外してやればめちゃくちゃ嬉しそうに笑った。正直普段は家事なんてしないし、手伝わねーけど、俺。こういうときくらいはな。

「あとで洗濯とかしてやるから寝とけよ」
「ありがと、こうへい」

いつもより呂律が回っていないさあらが喋るたびに、萌えってこういうやつかって思ってんのは内緒な。
腕をさあらの腹温めるつもりで回してやれば、あったかーいと息を吐き出すから、しばらくこのままこうしておいてやろう。
ケーキを食い終え、薬を飲んだのを確認してさあらの布団を引き寄せる。

「おもくない?」
「平気」

10分もすると、さあらは穏やかに寝息を漏らし始める。
そんなの見てたら、あー早かったしあったかいし俺まで眠気がどんどん増してくる。
起きたら、洗濯してやろ……とりあえず俺も寝よ。

「おやすみ、さあら」

おんなのこはたいへんだ


/ 表紙 /




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -