突然ざわめいた教室に、机に顔を伏せて寝てた俺はゆっくり顔をあげた。
「あ、とうやさん」
「朝っぱらから何寝てんだよ」
唇に薄い笑みを浮かべて俺を見下ろしてるとうやさんは、今日もあいっかわらずイケメンで。むかつくくらい。
あ、寝癖ついてるし。
「ほら、これだろ」
「あ、そーっす。あざーっす」
「つーか先輩をパシリに使うとか良いどきょーだな、てめー」
「とか言って、ちゃんと持ってきてくれるとうやさん大好きっすよ」
にひひと笑ってとうやさんを見たら、悔しそうに笑ってたので満足。
「あれ、とうや先輩じゃん」
「おー陽介、おはよ」
「おはよーっす」
遅刻5分前で、ようやく来た米屋は、とうやさんに挨拶しながら、俺の前の席にカバンを放り出した。
なぁそのカバン薄っぺらすぎんだけど、教科書はいってんの。
そう考えてたら、とうやさんも同じこと思ったらしい。
「なぁお前のカバン薄すぎん?」
「えそっすか?」
「何入ってんのかちょっと見してみ」
そうして開かれたカバンをとうやさんと二人で覗き込んで、はああとため息を吐き出した。同時に。
お前、さすがに財布と昼飯しか入ってないとかヤベーだろマジ。あれ、トリガーは?あ、トリガーはポケットなのな。
「陽介、お前来年も二年やる気じゃないよな?」
「米屋お前、来年は後輩だな」
「え?そんなやばい?」
やべーよ。ほんとやばい。
「そろそろこれ三輪と、月見さんに告げ口しといたほーがいいんじゃね」
「俺もそんな気してきました」
「だよな」
そういったら、さすがに米屋が焦る。
でもお前のためだぞって、とうやさんが静かにいうから、ぐぬぬと米屋は黙った。
「ねぇ、とうやーそろそろ行かんとやばいよー」
「あ、わり。柚宇待たしてんだった」
「あ、柚宇さんおはよーっす」
「いずみんおはよー。ほら、当真もう行っちゃったって」
「はいはい、行くって。じゃーな、公平、陽介」
ひらひらと手を振って教室を出ていったとうやさんは、そのまま柚宇さんと並んで歩き出す。あー見てると彼氏彼女みてーだよな。
「あの二人付き合ってんだっけ」
「いや、単に仲いいだけらしーぜ。二人共同じ寮だし」
「あーそっか。二人共寮だっけ」
「そうそう」
とうやさんも柚宇さんも、県外組ってことで、ボーダーが準備した本部近くの寮で生活してる。あーいいな寮生活。たまに寮のメンバーで集まって鍋パとかするんだってよ。楽しそうじゃね。
「今度寮の鍋パに俺らも参加しようぜ」
「え、そんなんやってんの。楽しそうじゃん」
早速鍋パしてーってとうやさんにLINEしとこ。
そう考えて、カバンからスマホを取り出した。
おはようスナイパー
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