「あれ……あれ……え、ない。どうしよう、どこかで落としたの?あれ……」

普段から、首にチェーンで引っ掛けていた公平に買ってもらった指輪。
制服から着替えていると、首にそれがないのが気付いて、顔からさぁーっと、血が引く気がした。

「どうしたの?姉ちゃん」
「とうや、あたしのいつも付けてる指輪のついたネックレスしらない?」
「いや、見てないよ」
「そっか」

何処かで落としたのだろうか、家の中をぐるぐると回りながら、落ちていないか探す。次々に部屋の中のものをひっくり返したから、もう室内はぐちゃぐちゃ。
とうやが、探しながら片付けてくれているのがせめてもの救いだ。

頭はパニックで、真っ白。
泣きそうになりながら探すけど、もう探すところは家の中にはない。

「公平さんちに置いてきたとかじゃないの?」
「……わかんない」
「いつまで持ってたとかは?」
「……っ、あ、午後の体育で体操服に着替えたときはあった!」
「じゃぁそれからだね」

その後行ったところは、教室に戻って、公平の家にいって、帰ってきて……なので、落とした場所はだいぶしぼられる。
どうしようどうしよう、数分間悩む。明日までまとうかな、でも、でも。

「とうや、私ちょっと出かけてくる!」
「一人で?こんな時間に!?」
「だって、明日まで待てないもん!あたし出たら、戸締まりしてね!」

家をそのまま飛び出した私は、携帯も持っていないことすら気付いていなかった。



そして、学校にたどり着いた私は校門のところで立ち往生していた。

「閉まってる……」

職員室の方はまだ電気がついてるみたいだけど……。
誰かに見つかったら怒られるんだろうなぁ。

でも、ここまで来たのに帰るのも……。そう思って、校門を乗り越えようと、手を伸ばした。


「はい、そこまでー」


後ろから、突然声をかけられる。
その声は、自分がよーく知ってる相手のもの。

「公平?」
「はい」
「なんでいるの?」

校門にかけてた足を戻して振り向くと、そこにははぁとため息を吐き出した公平がいて。
こいこいと、呼んでいたので、小走りで近付く。

「とうやが心配して電話かけてきたんだよ」
「え」
「スマホも持たねーでこんな時間に一人で出歩くな!」
「あ……ごめん。怒ってる?」
「当たり前だろ。心配させんな」

はぁ、ともう一度ため息を吐いた公平に、申し訳ないのと、指輪がないことで、どんな顔を見せたらいいかもわからなくて、顔を上げられない。
地面をじっと見つめていると、じわじわと目に涙が溜まっていく気がした。

「なぁ、さあら」
「なぁに」

そんな私に、公平はもう怒っていないのか、普段の声音で私を呼んだ。

「落としたのは、金の指輪ですか?」
「え?」

驚いて顔を上げれば。
ぎゅうと握った右手を出した公平は、にやりと笑って、顔を上げた私をみていた。
そして、左手を開くとそこには、いつもつけてたあの指輪。

「それとも銀の指輪ですか?」
「……銀の指輪!」

二人で作ったのは、シルバーのリングだから。銀だよね?あってるよね?
なのに公平は、差し出した左手に私が触ろうとしたら、だーめ。ストップ。と左手を引っ込めてしまう。

「え、なんで?」
「大事な指輪を落として泣きそうな正直者には、銀の指輪と、俺からのキスをあげましょう。いらねぇ?」
「いる。いる!」

うわぁあんと飛びついた私を軽く受け止めると、公平は指輪を私の左手の薬指に付けてくれた。
そして降ってくる触れるだけの軽いキス。暖かい感触に、自分の体が冷えていたのが分かる。

「とうやから電話きて探したら俺の部屋に落としてたぞ」
「そっかぁ……」
「初めに俺に連絡するだろ、普通」
「だって、落としたとか言ったら怒るかなって」
「夜中に一人で家飛び出すほうが怒る」
「ごめんなさい」
「すげぇ体も冷えてるし。上着くらい着てこいよな」
「焦ってたんだもん」

しょうがねぇなぁ、と公平は着ていた上着を私の体にかけてくれる。

「公平寒くない?」
「寒いに決まってんだろ」
「ごめんね」
「ありがとうだろ」
「ありがと、公平」
「はい、さっさと帰んぞ」
「はぁい」
「今日、お前んち泊まるわ」
「りょうかーい」

手を繋いで、風邪を引く前に、少しだけ足早に。家を目指して歩いた。
帰ったら、あったかーいお風呂にはいろう。
そう思いながら。冷たい手が、じわじわと公平の熱で暖かくなるのを感じて、私は笑った。

きんとぎんのこうへいさん


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