「え、二人喧嘩してるの?」
「喧嘩はしてない。公平が一人で怒ってるだけー」

いつも一緒に行動してる二人が、珍しく別々に作戦室にきた。
それだけで結構太刀川隊では一大事。私と慶さんがちらっと視線を交わしあったのは言うまでもない感じ。

いずみんは、慶さんがジュース買いに連れ出して。さあらは私の方に来たから、直球で聞いてみる。

「なにがあったのー?」
「最初はすごいどーでもいいことだったけど、公平が怒り出して、そのまま」

口も聞いてくれない。と、そういうさあらも頬を膨らませていて、これは結構質の悪い喧嘩をしたみたい。
二人って、あの束縛強すぎいずみんを、基本的にさあらが平気で受け止めちゃうから、滅多なことでは喧嘩しない。
けど、だからこそ、喧嘩をすると意外と根が深いというか、いつまでもお互いが謝らなくて長引くというか。

「私わるくないもん」
「そうだねぇ、結局なにがあったんだい?おねえちゃんにいってみ?」
「柚宇ちゃぁああん」

うええ、とさあらの涙腺はあっという間に崩壊した。
戦ってる時はあんなにビシっとしてるのに、どうして普段のさあらってこんなに泣き虫なのかなぁ。ってそういえば慶さんも戦ってる時は別人だったっけ。
あ、でもさあらが泣くのって大体いずみんのことか、それか太刀川隊のことだけなんだよ。
そういうとこがさあらのかわいいところだよねぇ。

「公平がクラスの子に、頭ぽんぽんとかしてて、それで」
「えー、それはダメでしょー」
「でしょ。で、さあらが怒ったら、いちいちそんな気にすることかって」
「気にするよねぇ」
「うん。で言い合いになって、それで……」
「よしよし、さあらわるくないよー大丈夫だよぉ」
「柚宇ちゃん、ううう」

いずみんって、さあらのパーソナルスペースにはすごいうるさいのにねぇ。自分には無頓着ってどういうことー。

「さあら、わるくないもん……」

そういうさあらの声は、本当に寂しそうで。早く仲直りさせなくっちゃ。



「慶さんどうだったの」
「いやーどうだろうなぁ。出水頑固だし」
「さあらも今はわたしわるくないもんってずっと言ってるー」
「いやまぁ、正直さあら悪くねーしなぁ」
「そもそも!あの束縛いずみんのことあれだけ我慢してるんだから!いずみんだって多少の嫉妬はちゃんと受け止めてあげなきゃ!」
「つーか嫉妬されるようなことしてる自覚ねーんだよな、出水の場合」
「えー」



結局二人は一言も喋らないまま、その日は別々に帰宅してしまって。
次の日作戦室へ一人で来たさあらは、いつもの元気は全くない影を背負ったみたいな感じで。まだ仲直りしてないのはまるわかりだった。

「さあら、大丈夫ー?」
「……大丈夫じゃない……」
「だよねぇ」

LINEも返事くれないの……おはようっておくったのに。
そういうさあらの目には既に大粒の涙が溜まって今にも零れ落ちそうで……しかも。

「さあら、寝てないでしょ」
「うん」

目の下にはうっすらと隈まで出来ていた。
あーもう!ほんとに頑固なんだから!いずみん!
いずみんのことだって大事な仲間だと思ってるし、弟みたいにも思ってるけどさぁ!
やっぱり、私は女だし!同じ女の子のさあらの肩を持つんだからぁ!

「私が話を付けてこようか!」

いきおいのまま、そう言えば。さあらはふるふると首を横にふった。

「わたしがちゃんと話しないとだめなの分かってるの……」
「さあらー……」
「謝って、話する……これ以上口聞いてもらえないとつらくてくるしい……」

結局、さあらはそういうと、無理やりに笑顔を浮かべて、立ち上がった。
よしよし、がんばっておいで。帰ってきたら私がさあらの分までいずみんに説教して、さあらをこれでもかってくらい甘やかしてあげるから。

くにちかおねえさんからみた喧嘩


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