「あ」
「あ?」

今日もいつもと同じ時間、いつものように公平と登校する。
一週間の半分くらいはどっちかの家にお泊りだし、それ以外の時は公平が迎えにきてくれるから。
一緒に登校しないことってほぼない。

なので今日もいつもみたいに登校して、下駄箱を普通に開けると。
ひらりと落ちた白い封筒。

「……今時、ラブレターってか」

うわぁ、すごい一気に機嫌が悪く……

「没収」
「はぁい」

こういう時は逆らっちゃダメ。そんなことしたら、このまま家に連れ戻されて、ごめんなさいしても許してもらえなくなって、しばらくベッドの住人になります。
過去の経験により学んでおります。

「放課後に屋上だってよ」
「いかないよー」
「行ってこいよ」
「えー」

怒ってる?怒ってますね。元々公平は相当束縛タイプの人だから。
公平が友達だと思ってる相手ならいいけど、それ以外の人と喋ったりすると結構怒ることがある。
因みに、なぜか慶さんとか結宇ちゃんもそういうところある。
なんなのかね?慶さんと結宇ちゃんは私のパパとママなのかね?

「すきなのは公平だけだよ」
「知ってる。けど、ムカつくんだよ。きっちり断れ」
「わかった」

しょうがないので、放課後屋上に行くことにした。
一人でいくのやだ、と言えば分かってるよと言ってくれたのでがんばる。




そろそろ11月な放課後の屋上は寒い!の一言。
そのせいか、人はほとんど居ない。

「さあらちゃん!」

突然呼ばれて、驚くというかなんというか。
いきなり下の名前で呼ばれると、やっぱり違和感しかない。

「来てくれて、ありがとう」
「ううん。えーっと、先輩ですよね」
「あ、うん。3年の谷口隆だよ」

名前を聞いても正直言って、覚えがない。どこかで会ったことあるっけ……
や、学校の中ですれ違ったりはしたのかもしれないけど。

「君が、あの、この間の学校にネイバーが現れた時。助けてくれたんだ。君が」
「あ、そうでしたか。……怪我なくて良かったです」
「それで、その時のさあらちゃんがすごく綺麗で好きに、なったんだ」

やっと本題に入ってくれた、とヒドいことを考える。
だって、そんなこと言われても困る。断る選択肢しかないもん。

「えっと、付き合ってる人がいるから、ごめんなさい」
「知ってるよ、2年の出水だよね」
「はい」
「出水なんかより、ずっと、君を大事にする」

ムッ。なんかよりってなーにー。公平なんかよりって。
言っときますけど、公平より私を大事にしてくれる人なんて世界のどこにもいません!けども!?

むうと口を開こうとしたところで。

「はいそこまでー」
「あ、公平」

後ろからぎゅうと、抱きしめられて、いつもの匂いにほっとした。あったかい。
あー振り向いてぎゅうってしかえしたいのに、出来ない!つらい!

「まず言いたいんだけど」
「ん?」
「さあらじゃねーよ。そっちの先輩」
「な、なんだ?」

ご機嫌絶不調に悪い公平の声に、背中がぴくりとするけど、公平の視線は向こうの谷口先輩に向けられているので、多分大丈夫そう。
その相手の谷口先輩は、公平のきっつーい視線にあからさまにビビってる。

「まずさ、誰の許可を得てさあらを下の名前で呼んでんの?」
「え」
「こいつ、俺のなんで下の名前で呼びたかったらまず俺に許可とってくんね?」
「え……あ、」

なぁさあら、とこっちに話を振られたので、私はひたすらこくこくと首を縦に振る。
逆らったりしません。こういう時は大人しくしているに限るのです。

「次、俺 なんかより さあらを大事に出来るって?」
「えっと」
「つまり俺よりこいつを守れるってことだよな。俺に勝てるの?あんたが?え?」
「……いや、そういうわけじゃ」
「自分で言うのもなんだけど、俺結構強いぜ?」
「…は、はい」

結構っていうか、そりゃぁね。上から数えたほうが早いよね、ボーダーで。
それって結構じゃなくて相当っていうんだよ。言わないけどね!
私は今、貝なの。しゃべらないの。刺激しないの!

「そもそも、俺がいるのに、告白してどうしたいわけ?俺と別れて先輩と付き合おうってこと?」
「いや、あの付き合って欲しいていうか気持ちを伝えたくて……」
「俺ら二人を不快にしてまで伝える必要あるんすかね?自己満足っすか」
「そんなつもりじゃなかったんだけど」
「じゃぁもう良いっすかね。こいつと俺が別れる可能性ないし、さあらがあんたのとこ行くことも多分絶対ないんで」

返事のなくなった先輩に、公平は満足したらしく。行くぞと、私の手を引っ張った。
それに大人しく従うつもりだったけど、でも。一言だけ伝えようと立ち止まる。
途端に、公平が不機嫌な顔になるのはわかったけど、これだけは言いたかった。

「先輩、私の事綺麗だって言ってくれて嬉しかったです。でも綺麗だとしたら、それは公平といるからだし、公平は世界で一番私を大事にしてくれるので。だからごめんなさい」

ふぅ。言い切った。満足したから、公平のとなりに並んであるきだす。
横目でちらりと、公平を見上げると、ほっぺたが赤いし、それにさっきまでの不機嫌そうな感じはなくなっていた。

「公平、ありがと」
「おー」
「今日エビフライ作るけど、うちにきますか?」
「おー」
「じゃぁ、一緒にかえろ?」
「おー。……愛してる」
「さあらも!」

こくはくされました


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