自分の体で逃げられないようにベッドに縫い付けた白い体。
同じ生活してるのに、なんでさあらってこんな白いんだろうな。

生きてるのに、血が通ってないようにすら思える白い体を、熱を確認するみたいに触って、触って、舐めたり、たまに噛んだり。
何しても逃げないさあらに、俺はひたすら甘えてしまう。

「さあら……さあら、さあら」

遠征で、俺は近界に住む「普通の人間」をこの手で……
そうしなければ、殺されるだけだと、無我夢中だった。
その時は迷うこともなかったのに、こっちに戻ってきて、換装をといたらダメだった。

頭の中をぐるぐるとその時の光景と、その時の手応えとか、後相手の苦しむ声がずっと回ってるみたいで、頭がおかしくなりそうだった。

「さあら、俺の名前呼んで」
「公平」
「もっと」
「公平、公平、こーへー、こーちゃん」

俺は生きてる、目の前にいるさあらが、俺を呼んでくれるから。俺はちゃんと生きてる。それにさあらも生きてる。
首筋から太ももまで、至るところに歯をたてる。その度に、さあらが漏らす痛みに耐えるようなため息が吐き出されるのに、悪いとは思うけど、衝動が止まらない。

このままじゃ、俺は、日常に戻れねーから、ごめんさあら、助けて。

その俺にとっての儀式みたいな行為の最中。
俺のスマホが鳴り響く。クソ、邪魔しやがって。

「なに」
「あ、帰ってきたんだな」

電話の相手は米屋で。きっと俺たちを心配しての電話なんだろう。
なのに今はそれを受け入れる余裕もねぇ。
手短に、話を切り上げて、もうなんか邪魔されたくねぇ。
そう思ったら、つい。部屋の隅に、スマホを叩きつけてしまった。ガシャンとすげー音。
あ、電話切ったっけ。まぁ…いいや。

腕の中のさあらが、ビクリと震えたのが分かって、ちょっと悪いことしたなって。

「公平……」
「わり、びっくりしたな」

謝って、ちょっと緊張してるさあらを、これ以上怖がらせねーように。
噛むのは減らそう。もう噛むとこも残ってねーしな。
これしばらく痛いよなぁ、つーか体操服に着替えも出来なさそう。
ごめんな、と思うけど。さあらは多分しょうがないとか思ってるんだろうから。
俺はそれに甘える。なんてヒドい彼氏なんだろうな。

その後は、ひたすらに、さあらの体を使って快楽を貪る。
熱を叩きつけて、熱を吐き出して、吐き出して、吐き出し続けて。

「さあら、寝たか」

寝たつーか気絶か。何時間も時間が経ってて、さすがに俺ももうなんも出ない。
抱きまくらよろしく、さあらの体を自分の方に引き寄せて、腕を回してさあらを捕まえて、俺も目をつぶった。



腕の中のさあらが動いたのを感じて、目を覚ます。

「起きてんの?」
「うん、さっき起きた」

俺より早くに目を覚ましていたらしいさあらの声は、既に覚醒してはっきりしていた。
無茶してごめんな、と伝えれば小声で、へーき大丈夫。と甘い声がして。
さあらを抱きしめる腕に力が篭ってしまうのはしょうがねーとおもう。

「ごめんな、ヒドい彼氏で」
「ほんと、すごいいたいもん。ヒドい公平ですね!」
「ごめんって」
「いいよー、公平の愛を受け止めるくらい簡単だから」
「便利機能ついてるしな」

俺がさあらにする全部を愛にしてくれるさあらが、俺にとってどれだけ大事なのかは、言葉になんて出来ねーくらいで。

「なぁ、俺にも跡付けて」

そういえば、さあらに初めて肩に強く噛みつかれた。
お前いつも、こんなに痛いの我慢してたのかって、思ったけど。
でも嬉しそうなさあらを見てたら、何も言えなくて。結局俺は卑怯なまま、さあらに愛を囁いた。こんなヒドい男だけど、お前のこと逃がすつもりはないから。
逃げられないように、何度も愛の言葉を囁いた。

あいをいたみでしめす


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