俺、とうとう死ぬのか。
本気でそう思った。
頭が割れそうだし、胃の中からなんか出そうだし、体は熱いしだるいし、関節のそこら中がギシギシいってる。

ベッドから起き上がることもできそうにない。寒い。

手元にスマホがあったのがせめてもの救い。
可愛い部下達につながるLINEのグループをいつも通りなれた手順を、ぼーっとする頭でなぞって、
おれは、もうだめだと遺言を残して、その後は覚えてない。



「慶さーん大丈夫?」

ペチペチと温かい手で顔を叩かれて、うっすらと目が覚める。
この甘い声は……

「さあら……か?」
「そうだよー、慶さん風邪みたいだね」

さあらと、その隣には出水の姿もある。手には体温計らしきものを持って。

「37.7。ちょっと熱ありますね」
「風邪……風邪ってこんなんなのか」
「へ?」
「寒いし、体中がギシギシいってるし、頭はいたいし、二日酔いのあとみたいに吐きそう」
「典型的に風邪っすね」
「慶さん、もしかして風邪ひいたことなかったの?」

そう言われ、思い返してみるが、風邪引いて寝込むなんて記憶のどこにもない。
初体験だった。
さあらや国近の看病ならしたことがあるけど、実際こんな状態なんだな。これはきつい。
今度、さあら達が風邪引いたらめちゃくちゃ甘やかしてやろう。決めた。

「軽い風邪だと思いますし、結宇さんから風邪薬も預かってきてるんで」
「暖かくして寝ててー」

テキパキと勝手知ったる俺の家。って感じに、出水とさあらがおかゆやら薬やら水分やら、布団一枚じゃ寒いっすよと追加の毛布まで出てきて、こんな時に笑いそうになった。

「わりーな、迷惑かけて」
「迷惑はかけられてないよー」
「心配ならしてますけどね」
「いつも、慶さんがしてくれてることしてるだけだよ」
「そうそう」

額に冷えピタまで貼られてゾワゾワする感じが落ち着かない。
けどその冷たさに、慣れてきたら、徐々に眠気が体を包んでいく。

「お前ら、帰るのか?」
「今日は泊りますよ」
「そうか」
「病気の時心細くなるからね、ちゃんと居たげるよ慶さん」
「なんで安心して寝てください」
「わか……った……」

風邪、なおったら。なんでも好きなもん、食わしてやろう。
そう思いながら、俺は夢の中に落ちていった。


たちかわさんのかぜのなおしかた


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