「ねえねえ、あの人でしょ?」
「あ、そうそう。やまだサンね」

《彼氏の伝手でA級1位になった人》

さあらをそういう人は入ったばかりのC級や、新人職員に多い。
それは事実を知らない無知さと、多少の妬みなどから来る全く真実のない作られた噂だったが、何故かこの噂はさあらが太刀川隊に入って数年消えることがなく、細々と語られ続けている。

「新人が入隊すると毎回これだな……」

呆れたように言うのは先の噂を耳にした菊地原が表情に侮蔑を滲ませた理由を聞いた歌川だった。

「あの噂本当にウザいよね」
「ああ。あれは結局さあらだけではなくその太刀川隊以下の全ての隊員を侮辱している」

菊地原と歌川の後ろから風間も、遠くに固まる新人の姿を視界に捉えながら、表情を険しくしていた。

太刀川隊が結成されてから、数年。
あの隊は、長く、その全ての隊のトップに君臨し続けている。
その理由は太刀川が強い、それだけではない。
天才と呼ばれる射手.....出水が、オペレーションに入ると人が変わる.....敏腕オペレーター国近が、そして、豊富なトリオンと他の銃手とは一線を画す機動力を持つガンナー1位のさあらが、それぞれその力の全てを集結させるからこそ。
当然のようにA級1位を守り続けているのだ。
それこそ、現状足でまといにしかなっていない人間を隊員に抱えていたとしても。

A級隊員や、B級上位の隊員なら、全員が。少なくとも1度以上、太刀川隊と戦った経験がある。
そしてそれの結果は敗北の経験の数が、勝利の経験の数を遥かに上回っている。
それがA級1位ということだ。
勿論風間隊とて、いつかは必ず太刀川隊を超えるつもりで日々の研鑽を積んでいる。
だからこそ、あのさあらにまつわる噂は忌々しい。

「彼氏の伝手なんてそんな巫山戯たことしてる隊に負けてる、そう思われてるってことですよね」
「そうなるな」

本当に忌々しい話だった。

きえないあくい


/ 表紙 /




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