食後の運動代わりにフラフラとさあらの買い物に付き合って、さあらが飲みたいという某チェーン店のカロリーたっぷり生クリーム地獄のあれを飲んで、そろそろ帰るかと、モールから出る。

「商店街で、コロッケ買って、あ牛乳も買って帰らなきゃ」
「はいはい、荷物持ちでもなんでも任せろ」
「いつも助かってます」

ハートが付きそうな甘えた声に、しょうがねぇなとしか思えないくらい俺はさあらに甘いので。文句なんてない。
米買うのは、よし換装するから待っとけって感じだけどな。それか太刀川さん呼ぼうぜ。

そのまま商店街の俺も太刀川さんも行きつけの肉屋のコロッケをとうやの分も足して大量に買い込んで、あとは警戒区域付近のさあらのマンションへ戻るだけ、だ。

「あ、LINE。とうやだ」
「ん?」
「公平さんのお母さんに会って今日はハンバーグだっていうので、公平さんちに泊ります、だって」
「は。まじかよ」
「まじまじ」

さあらの差し出した携帯を見つめていると、今度は俺のスマホが震える。
LINEの通知は、俺の母さんで。内容は今日はとうやくん泊めるからというやつ。
もうまた公平のおうちに迷惑かけて!とさあらは怒っていたけど……
これ多分あれじゃね、母さんと、とうやに気を使われた奴じゃね?
いや、うん。ありがたく噛み締めます。遠慮なく、さあらのこと美味しくいただくとします。一番の誕プレだわ。



とか良からぬことを考えてた俺が悪かった。
マンションまでの道はすぐ横が警戒区域。
そこをのんびり歩いていると、俺もさあらも嫌ってほど聞き慣れてる、サイレンが辺り一帯に響く。

―― ゲート発生、ゲート発生 座標誘導誤差 ... ――

「げ」
「えー……」
「すげぇ近くね、これ」

案の定。俺とさあらのスマホに同時に通信が入る。

「はい……」
『二人近くにいるわね?』
「残念ながら」
『おねがいできる?警戒区域外がすごく近いから一刻も早く片付けてほしいの』

沢村さんからの直接の指令。断れるはずもない。
はぁと、社畜のため息を吐き出しながら、二人してトリガーを軌道した。
トリガーオン、という声が疲れ切っているのは、この場合は許してほしい。

「公平、飛ぼう」
「おう」

グラスホッパーというさあらの声がして、目の前に見慣れた板が現れる。
それを踏み抜けば一瞬で体が浮かび上がり、次の着地点にまた板が。
それを繰り返せば、あっという間に数百メートルを稼いでゲートから湧いてくるモールモッドの群れの真上に。

「せっかく気分良くでかけてたのに、テメーらのおかげで台無しだよ!アステロイド!」

イライラをぶつける相手として近界民ならぴったりだ。
最大級サイズでアステロイドを作りだし、空から雨のように降らせれば、5,6体のモールモッドがその雨を耐えきれずに動きを止めている。

「出水、やまだ、現着」

潰れたモールモッドの上に降りれば、10メートル程先に、さあらも降り立った。
既に両手にハンドガンを持ち、戦闘態勢は出来ている。

「割と多いな」
「モールモッドがあと10匹くらい?バンダーが1匹かな」
「モールモッドは任せた。先にバンダー潰してくるわ」
「りょーっかい」

奥に見えるバンダーを目指して飛び上がれば、さあらも動き出す。
モールモッドの高速の斬撃も、さあらを捕らえるにはちょっと遅い。
風のような速さでモールモッドとの距離を詰め、斬撃が振るわれるより先に、必殺のアステロイドを、弱点に的確に叩き込み、そして離れる。慣れたその動きに、問題はなさそうだと、自分の相手に視線を移す。

「あ、やべ」

砲撃が来る。しかもあれ住宅街側じゃねーか。
撃たせるわけにはいかない、が間に合うか?
結局、時間がねぇなと砲撃の向く先に自分の体を投げ出した。

「ちょ、ちょっと公平!!」

さあらの慌てた声を聞きながら、砲撃が放たれると同時にフルガード。
辺りに響く衝撃音。その衝撃の真ん中で、俺のシールドはなんとか耐えたし、住宅街に砲撃が行くこともなかった。よく見たらシールドは四重。さあらのか。

「わりーさあら」
「びっくりさせないでよ、もお」
「さすが俺等だよな。バンダーの砲撃耐えるとか」
「のんきなこと言ってないで、早く倒してよ!ねぇ!」
「分かってるって」

メテオラとバイパー。それをトマホークへと合成し、細かく分割する。
弾道を描く作業は割と好きだ。一本一本それぞれ軌道を描くのは中々出来ることじゃないと太刀川さんにも評価されているしな。
半分以上を砲撃直後の無防備な目に向かわせ、残りを頭や胴体で弾けるように。
ドドドっと激しい炸裂音と煙がバンダーを包んで、それが消えるころにはぐらりとバンダーの体は地面に倒れていた。

「こっちは終わったぜ」
「こっちはあと半分、かな?」
「ん。早く終わらせてコロッケ食おう」
「うん」

さあらの動きに合わせて、モールモッドにバイパーを叩き込む。
そのバイパーがモールモッドの動きを止め、さあらのアステロイドが目を叩き割って。
それを数回繰り返して、ハイ終了。

「沢村さーん、終わりました」
『ありがとう、二人共。報告は……」
「明日でも良いっすか?」
「そうね、非番だものね。明日よろしくね」
「出水りょーかい」
「やまだ、りょうかいっ」

ふぅ、報告はなんとかまぬがれた。
通信を切って、さあらを見ればよかったとほっとしたように笑っていた。

「帰るか」
「うん!」
「あれ、そういやコロッケどうした?」
「……あっ!」

道に投げ出してきちゃった!!
は?まじ?ふざけんなよ!

さあらにグラスホッパー出させてめざすは、コロッケ。
さっきまで歩いていてた道に戻れば、道の脇のフェンスにかけられたコロッケ入りのスーパーの袋。

「あーよかったぁ」
「心臓止まるとこだった」
「おおげさ」

ふぅと二人して換装解いたら、右手にコロッケの袋、左手でさあらの手を捕まえる。

「コロッケ冷てーんだけど」
「帰ったら揚げなおしてあげる」
「ならいいか」
「でしょ」

美味しく食べられそうなコロッケと、その後のお楽しみに気分は簡単に上がる。
単純な自分に呆れるけど、でもそのおかげで幸せなので。問題なし。

「さあら」
「なーにー?」
「今年もありがとな」
「こちらこそ。生まれてきてくれて、ありがとう」
「どういたしまして」

ようやく辿り着いたさあらの部屋に、体を滑り込ませればさあらの家の匂いに一瞬で包まれる。安心とともに、さあらを腕の中に包めば余計幸せの匂いがした。
よし、コロッケ食ったら。風呂はいって、あとはたっぷり。

「さあら、明日予定は?」
「なんにもないよ。夕方から任務だし報告に本部に行くだけ」

なら多少寝坊しても問題なし、と。
じゃぁ、遠慮なくたっぷりいただきます。

にやける顔を我慢出来そうにねーから、ぎゅっとさあらを抱きしめてごまかしておいた。

それではかえりましょう


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