ちんたら歩いてたどり着いたショッピングモールは、休日のせいもあってすげぇ人だった。そういや、最近大改装したとかオペレーター女子軍団が言ってたっけ。

30分くらいは歩いたけど、俺もさあらもそこまでバテた感じはない。
米屋みてーな体力バカには勝てるわけねーけど、これでも俺もさあらも結構体を動かすことは嫌いじゃない。
当たり前だけどな。

「靴はー?」
「こないだ欲しかったスニーカー買った」
「んー……服?」
「去年も服じゃなかったっけ?」

別になんでもいいんだけどな。服でも。
でも、どうせなら特別感のあるやつがいい、とか思って適当にモールの中をふらつく。
家から繋がれたままの手は、一度も解かれてなくて、さあらの俺より少し高い温度が気持ちいい。

「買い物おわったらごはんあそこがいい」
「おー。いつもんとこな」
「うん」

人の多さに圧されて、さあらとの距離は少しずつ縮んでいく。
横を向けばすぐそこにさあらの頭。
何かを話す度に見上げてくるところが、すごい可愛いと思いマス。

「あ、あの店いこ」

俺が指さしたのは、ゴツめから、キレイめまで揃うシルバーアクセの店。
いいこと思いついた、そういう気分でめざすは指輪の並んでるとこ。

「ペアリングにしようぜ。お前の分俺が金出すし」

そう言って連れてきたショーウィンドウの中を覗き込むと、さあらの視線をめっちゃ感じる。柄じゃねーって?うるせーな黙ってどれがいいか選べ。
ちょっと耳が赤くなってる自覚はあるけど、だからこっち見んな。ガラスの中見ろっツーの。

「誕生日プレゼントなんだからさあらがお金出すー」
「ダメ」
「えー……」
「じゃぁ昼飯奢って」
「それはそのつもりだったけど」

じゃぁ良いじゃん。そう言いながら、改めてガラスの中を覗き込む。
シンプルなやつならいつでも付けとけそうだよな、と呟けばそうだね、とすぐ近くからさあらの声。機嫌の良さそうな甘ったるい声に、ペアリングの提案は中々当たりだったと実感する。

「ねぇねぇ公平これは?」

さあらの指先をたどれば、シンプルで中っかわに石を嵌めれるタイプのシルバーリング。
反対意見なんてない(正直なとこさあらとペアがいいのであってデザインとかなんでもいい)ので、すぐに店員を呼んでそれを出してもらう。

「一週間ほどで出来上がりますので、またご連絡を」
「ありがとうございますー」

嵌め込む石は、すったもんだの上、俺の誕生石とかいうサファイアをさあらが選び、そのままさっさと代金を支払ってしまう。
もちろんこっちもすったもんだの上、しっかり半分は俺持ち。
満足な気持ちで店を離れる俺と違って、さあらはやはりちょっと不服そうだった。

「誕生日プレゼント買ったって感じしないんだけど」
「俺は買ってもらった気分してる」
「なら、いいの……かなぁ」
「いいだろ。ほら腹減ったしいくぜ」
「うん!三段パンケーキたのんでいー?」
「いいけど、ちゃんと食えよな」

いっつも半分以上残してもう食べれんっていうからな、さあら。

「食べるもん、お腹すいたし!」
「いつもそういうよな。俺エビフライ頼も」
「ミックスフライじゃなく?」
「コロッケは帰りの商店街で、今日の晩飯な」
「神薙、りょーかいっ」

空いた手の方で、だらしない敬礼が可愛くて、ちょっとパンケーキの残りくらい食ってやってもいいか。
そう思いながら、日常だとやたらとすぐ方向音痴になるさあらの手を引いて、目的のカフェへと足を向けた。

おかいものしましょう


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