さあらが弟と一緒に住んでるのはボーダー関係者が住んでるマンションの一部屋。
もう何百回と来てるから、慣れた手つきでさあらの住む5階のエレベーターのボタンを押す。
エレベーター降りたら5つ目の扉。別に合鍵はあるからそのまま入りゃいいけど、気分的なもんでインターホンを鳴らした。
数秒待てば、中からカチャっと音がして、ほとんど同時にドアが開く。

「あ、公平さん」
「お、とうや。あいつは?」
「中で洗濯物干してます」
「そっか」

顔を出したのは、さあらじゃなくてさあらの2つ下の弟、とうや。
あのさあらの弟なだけはあって、京介クラスにイケメンだし、もさっとしてない分こっちのがモテそうな気がしないでもない。

中に戻るとうやとともに室内へ入れば、さあらの甘ったるいおはようが聞こえて、気分がよくなる。

「おはよ、公平」
「おー」
「もうすぐ終わるからごめんね」
「いいよ、ゆっくりで」

ソファーで姉の背中を見ているとうやと会話でもして待ってりゃいいや。
中学の頃からさあらと付き合い続けてる俺ととうやは結構仲がいいつーか、とうやが俺によく懐いてくれてるつーか。
俺たちが夜勤な時は、俺んちで預かったりとかしてるしな。

「そういやとうや、受験だっけ」
「うん。公平さんたちと同じとこ行くよ」
「え、お前頭良かっただろ?」
「まぁ一応六頴館も行けるって先生には言われたけど…進学する気ないし」
「へぇ」
「それに……実はボーダー試験受かったんです」
「まじ?さあら、よくオッケーだしたな?」
「この一ヶ月くらいめっちゃ説得しました」

やっとオッケーくれたんです、と嬉しそうな顔のとうやを目の端に捉えつつ、さあらを見るとはぁぁ、と大きなため息をはいて首を横に振る仕草をしたのでまだ納得はしてないんだろう。
でもなぁ、俺らがダメつっても説得力ねーって。

「まぁなんかあったら相談しろよ」
「はい!」

いい返事だな、と浮かんだ苦笑を口の中で噛み殺して、洗濯物を干し終わったさあらと、じゃぁ出かけるか、と立ち上がる。

「とうや、今日はどうするの?」
「もうちょっとしたら出かける。夕飯までには帰るよ」
「わかった、気をつけなさいね」
「分かってるって」

普段は俺にも、太刀川さんたちにも甘えっぱなしのさあらも、とうや相手だとちゃんとしてて、逆にそこが面白くてつい笑いそうになる。
もはや姉つーか母親だもん、口調とか。
笑ってたらじろりとさあらの目がこっちに向けられたので、とりあえず素知らぬ振りして靴をはいた。


エレベーターに乗り込むまでには、俺とさあらの手は自然と繋がれて。
壁にもたれかかる俺にさあらも自然と体を寄せてくる。しかもそのまま上目遣いに俺を見上げるさあら。なにこれ可愛い。この生き物。

「公平なにほしい?」
「んー今これつって欲しいのねーんだよなぁ」

もうすぐ俺の誕生日ってことで、今日のデートの目的は俺へのプレゼントを買うこと。
サプライズとか大々的なパーティーとかそういうの苦手だと付き合い初めに言ったから、それ以来誕生日頃になると、さあらは俺とこうしてでかけて何かを一緒に選ぼうとしてくれる。
毎年、どうせなら欲しいものあげたいもんね。と笑うさあらがほんとにたまんなく好きだ。

「適当に見て回ろ、いいのあったら遠慮しないでね」
「おー」

正直なとこ、こうやって出かけてるだけで十分なんだけどな。俺。
とりあえず、今からいくモールにさあらが好きなオシャレ系なカフェがあるし、昼飯はそこだなと思いながら、繋いだ手に力を込めた。



おでかけしましょう


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