ソファーでスマホを見つめてる振りをしながら、俺がずっと目で追うのはパタパタと動き回るさあら。
日々の任務や学校でどんどん溜まっていく洗濯モンを片付けたり、掃除機かけたり。
あー、うちの嫁(将来的)はよく働くな、なんて。
いつもはおろしてる髪を上でまとめていわゆるポニーテールってやつ?
さあらが動くたびにひらひらと揺れる髪の毛につい誘われるように手を伸ばすけど、邪魔するなと怒られそうなのでやらない。
「なにー?」
「なにが?」
じいと見てたら気がついたらスマホはどっかに行ってて、視線を感じたらしいさあらがこてんと首を傾げた。そういうのやめろ、かわいいんだよ。
「視線を感じたから、なにかなって」
「あー」
「あ、おなかすいた?ごはんつくろうか?」
「ん、まだへーき」
「そう?」
不思議そうな顔してさあらはまた動き始めた。
まだ当分、俺の相手はしてくれそうにねぇな。とため息がこぼれるのはしょうがない。
落としたスマホを拾えばニュースアプリの片隅にアクセサリーの広告が目に入る。
さあらと付き合うまでアクセなんて興味なかったし、服だってきれりゃなんでもいいとか思ってたけど。今は違う。あいつはすげぇ可愛い大事な彼女だし。あいつの隣にいるならって気は使う。あいつが持ってるファッション雑誌みながら、あーこれさあらに似合いそうとかこれさあらに買ってやろなんてしょっちゅう考えてる。
スマホにはシンプルなダイヤのピアスが映ってた。
ふむ。
「なぁ、さあら」
「んー?おなかすいた?」
お前なんでさっきからそればっかなの?そんな俺いつも飯ねだってるっけ?
いや、そんなんどーでもいいから。
「ピアス開けね?」
「うん、いーよ」
「……もうちょい悩めよ」
「え?」
公平が開けてくれるってことでしょ?いいよ?と首をまたこてんと寝かせる。
だから可愛いからやめろっつの。
「俺も開けるから、同じピアス半分こな」
「うん!」
いきなり突拍子もないことを言う俺に、一切不審がることもなく。嬉しそうに笑うさあらを抱き寄せて、膝の上に乗せてやる。慣れた重みと熱が心地良い。ふわりと漂うさあらの匂いもたまらない。ちょっと汗臭いのはさっきまでたっぷり働いてた証だろう。それすらいい匂いに感じるってのは内緒な。さすがに変態くせぇし。
「俺さ」
「うん」
「お前のことたまーに心配になるわ」
「なんでよ」
「もうちょい警戒心とか持ったほうがいいと思う。そのうち誰かに騙されんぞ、さあら」
「だって公平だもん」
「あ?」
「公平になら騙されてもいいもん」
あー。ほんと。ばぁか。
「俺お前のそういうとこ、すげぇ、好き」
腰に回してた右手で彼女の後頭部を掴んで引き寄せながらそういうと、ふふりと可愛く笑うから。もうたまんなくなって、さあらにがぶりとかみついた。
ぴあすをあけると決めた日
前 /
表紙 /
次