もぞもぞと腕の中のさあらが動いてるのを感じて目が覚めた。
トイレかと思ったけど、しばらくもぞもぞしてるだけで起きねぇから違うらしい。

「公平」
「なんだよ」
「公平、起きて」
「起きてるって」

首元グイグイ引っ張られてしょうがねぇなと目を開ければ、さあらは今にも泣きそうな顔で俺を見てた。

「あ?どうした?」
「……公平が」
「俺が?」
「さあらのこと、知らないって、知らないって言ったぁ」

は?何言ってんのこいつ。
そう思ってしまったのはしょうがなくね?
腕の中でゴンゴン頭をぶつけてくるさあらは痛くねぇけど鬱陶しい。

「意味がわかんないんですけども?さあら?」
「夢の中で公平がさあらのことしらないって!すきじゃないっていったぁ」
「あー……」

夢なぁ。こないだ俺も変な夢見たから、あんま人の事言えねぇけどさ。
夢だろ?俺悪くねぇじゃん。

「泣くなよ、たかが夢だろ?」
「そうだけど!」
「俺がお前のこと好きじゃねぇとかあると思うか?」
「思わないけど!」

泣いてる顔を袖で無理やりぬぐってやる。ぶっさいくな顔になったけど、でもそんなお前も死ぬほど可愛いと思うから。

「大丈夫だって、お前しか好きじゃねぇよ」
「……ん」
「あいしてる、さあら」
「あいしてるよ、公平」

胸に顔を押し付けてきたさあらを受け止めるように少しだけ腕に力を込めてやれば腕の中で柔らかく笑ってる声がした。
そのまま、背中を叩いていてやれば、あっという間にさあらは二度寝したっぽくて。

「ほんと、世界で一番手のかかる女」

返事はななかったから、俺もそのまま早々に意識を飛ばした。

ゆめくいばく ver.I


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