勝手知ったるさあらの部屋。
出水公平は彼女の部屋の机の上に投げ出された雑誌を見て、数秒動きを止めた。


それから数日。
いつも通りの空気の流れる太刀川隊室の中で、国近とゲームをしているさあらをぼーっと見つめながら、出水は隣でだらりとしていた太刀川に声をかけた。

「太刀川さん」
「ん?どーした」
「さあらってドレスと白無垢どっちが似合うと思います?」
「は?」

ゲームをしている2人に聞こえないように、と気を使ったらしい出水の小さな声だったが、太刀川の大きな声でなんの意味もなくなった。
テレビの方を向いていたさあらは驚いて出水達に視線を向けた。

「なに?慶さんびっくりしたぁ」

因みに国近は大きな声に一瞬肩を震わせたもののゲームの手は止めていない。さすがだ。

「いや、出水が変な事言うから」
「ったく、太刀川さんがでけー声出すから!」

どしたの?とさあらはあっという間にゲームを放り出して、出水と太刀川の足元に移動して2人を見上げた。

「んー、さあら。お前こないだ部屋のテーブルにゼクシィ放り出してたろ?」
「あ、うん」
「見てたらどのドレスもさあらに似合うし白無垢着たさあらも見てみてーなってなったしで、迷って太刀川さんに相談した」
「あー……あれね」
「どうせなら最高にかわいいさあらが見たいし」
「えっと」
「教会とかも色々あんだな」
「う、うん」
「あ、それとも神社のがいーわけ?」
「どっちでも……って公平!あのゼクシィは付録が欲しかっただけ!」

完全に意識を未来に飛ばした出水を呼び戻すようにさあらは一際大きな声を出した。
そう、さあらは特に雑誌自体には興味もなく付録だったキッチンツールに釣られて買っただけ。

そう説明されて、途端に出水の表情はつまらなさそうに歪んだ。

「怒った?」
「いや怒ってねーけど」

そうはいうが、声にも表情にも不機嫌丸出しで。さあらは少しだけ空いていた距離を出水の方にぴたりと寄せて、下から見上げるように出水の顔を覗き込んだ。

「でも公平と結婚するならどんな式でも嬉しいよ、ドレスなくたっていいし、別に教会じゃなくてもいいよ」
「ん」
「私、公平と居る時がいちばん綺麗だと思う!だから公平と結婚できるならなんにもなくても大丈夫!」
「さあら、お前ほんとさ」
「んー?」
「俺の事大好きだな」

ふっと笑った出水はもう不機嫌さなんて欠片もなく、そっとさあらの体を抱えあげるとそのまま腕の中に彼女を閉じ込めた。
さあらは答えの代わりに、温かい腕の中にそっと擦り寄った。




「なぁ、国近」
「なーに」
「俺らこれなに見せられてんだよ」
「いつもの事じゃん?」
「……否定出来ん」

みらいのじゅーんなぶらいど


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