『あ、』

A級ランク戦の最中。
インカム越しに聞こえてきたのは、小さな爆音とその少し後。俺の大事なあいつの気の抜けるような小さな声だった。

『ありゃ、たいへーん』

続けて柚宇さんの声には焦りは感じらんねぇから。まぁそこまで大変なわけではないんだろうと思いながらインカムに向けて声をかけた。

「さあら、どーした?」
『んー……ちょっとねー』

すぐにさあらから反応は返ってきたし、痛みに声が歪んでいることもないので、少しほっとした。
分かってても、さあらがいてぇ思いすんのは嫌だ。

「大丈夫か?」
『まぁ、ベイルアウトはしないから大丈夫……かなぁ?』
「なんだよ、どうした」
『んー、いずみん。指示するから移動してー』
「はぁ、出水りょーかい」

どうにもはっきりしないさあらの言葉に、多少の苛つきを感じながら、柚宇さんの指示通りに動き始める。どうやらさあらと合流させようとしているらしい。
しばらく進むと、戦闘音のようなものも聞こえてきた。

『そこの角曲がったらすぐさあらいるから、回収してー』
「ラジャー」

そして物陰から、戦闘してる方をそっと覗き込んで。

「おい、さあら……お前なぁ!」
「ひゃっ……!」

物陰に隠れて、とかバイパーでさあらの相手をぶっ潰して、とか。そういうの全部頭からすっ飛んだ。

俺の怒鳴り声にビクリと動きを止めたさあらは戦闘中なのも忘れてんのか……俺の方をいつもの何倍もゆっくりと振り向いた。

「どういうカッコで戦ってんだバカ!」

戦闘相手なんてどーだっていい、むしろ後で潰す、と決めてズカズカとさあらに近付いたら。
不安そうな顔したさあらが見えて。
怒ってる?とか考えてんだろうけどさ。
なぁ?怒ってるに決まってんだろ。
隊服のコートが吹っ飛んだのかなんなのか、焼け焦げたインナーやらなんやらからチラチラ肌色が見えるのは気のせいじゃねーよな?

泣きそうなさあらをグッと抱き寄せて。
「掴まっとけ」
そう言ってやりながら両手でこれでもかと大きなアステロイドを作り上げた。
そしてそのまま怒りに任せて弾を合成する。お。いつもより零点何秒が早い。思考の端で臨時接続という機械的な声がした。

「とりあえず、邪魔すんなよ」

360度、とりあえず目に見える全部を消し飛ばすつもりで放った弾は敵も味方も関係ない。人も建物も関係ない。一瞬で俺とさあら以外は半径数百メートルが全て消し飛び、更地になった。
立ち込める煙を振り払いながら、腕の中で大人しいさあらに腕を回す。

「おこってる……?」
「当たり前だろ」
「ごめんなさい」
「おー」
「メテオラに引っ掛けちゃって……」
「だろーなぁ。もっと早く呼べ、バカ」
「ごめんなさい」

はぁ、とため息が漏れるのはどうしようもない。
手早く自分のコートを脱ぐと、半裸のさあらを隠すように、袖に腕を突っ込ませて、適当にコートの前も閉めてやった。

「これで良し」
「ありがと?」
「どーいたしまして」

さすがにちょっとでかい俺の隊服に埋もれたさあらは、いつもより頼りない顔が余計に可愛くて。
たまんなくなって、とりあえず俺はランク戦の真っ最中だというのも忘れて、噛み付くようにさあらにちゅーをしてしまい。
太刀川さんに怒鳴られる羽目になったのだった。

かれしゃつならぬかれこーと


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