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金はあったから、いろんな国を周りよったんやけど、一週間ぐらいしたある時、デルタ王国出身の商人から言われたんや。
『君達は正しいことをした。君の両親の教育方法には、疑問を抱いている人も多かった。それに、ここだけの話やけど、君が結婚する予定やったリリアって子の家族は、何があったかは知らんけど、王族を憎んでいてね。結婚したその夜に君を殺す計画があったらしい』
俺は寒気がした。
もしサラを好きになっていなかったら、あのタイミングでラルフから連絡が無かったら、俺は今頃、ここにいなかったのかもしれない、と思ってね。
けど、商人はこうも言ったんや。
『もちろん、王家側はそんなこと全く知らないから、お前のことを完全な悪者だと思ってる。しかも二日前、ミリエラの全部の国に、君と嫁さんを捕まえてくれという通達を出したんや。つまり、このままうろうろしていたら、どこに居ても捕まる可能性がある』
だから、私が匿ってあげようか、ってね。
命が惜しかったから、その商人の言う通りにしてたんや。
それからまたしばらくして、クロードから連絡があったんや。
困ってるなら、一緒に地球(テラ)に逃げないか、ってね」

次はラルフだ。

「僕は皇帝の一族だったんだけど、どうしても気になることが出てき出したんだ。
子供の時はもちろんそれなりに不自由ない生活をしてきたんだけど、ある時から急に生活の豪華さが増してきたんだ。
使用人の数が明らかに増えたり、食事も珍しいものを使ったものが多く出てきたり、さらには宮殿に新しく礼拝堂を作ったりして。
けれど、僕が宮殿の窓から見た限り、人々の生活が豊かになっているような雰囲気はしない。
どっかおかしいな、と思っていたんだ。
自分で色々と調べてみたけど、証拠は隠されているらしくて全く見つからない。
やっぱり気のせいかな、って思った、その矢先に、僕は見てしまったんだ。
何を見たか。
そうさ、皇帝の有力な部下が、どこかのお偉いさんから賄賂を受け取る瞬間を見たんだ。
僕は魔法を使って、その様子を記録した。
しかもその何日か後に、皇帝本人が違う人から黄金をたくさん貰っているのも見た。
僕は確信した。汚職が起きている、とね。
僕は告発しようと思った。
けど、そのことで僕の身に万が一のことが起こる可能性がある。
どうしようかと悩んでいる時に、『皇帝の体調が思わしくないから、代わりに明日から出張してくれ』って頼まれてさ。
タイミング悪いな、と思いつつ行ったら、偶然君達とばったり。
クロードが『Ark』を探してると聞いて、僕は思いついたんだ。
『「Ark」の力を使えば、何とかなるかも』とね。
一人で行くのはちょっと心細かったから、シーザも誘って。
そこから『Ark』を手にするまでは知っての通りだ。
で、国に帰ってからのことなんだけど、シーザが一週間後に『Ark』を使うって聞いてたから、それからしばらくしてから告発しよう、って思ってたんだ。
だけど、シーザが起こしたいざこざが、思いの外世界を混乱させてね。
だから、これに乗じてやってしまうことにしたんだ。
僕は告発文を書いて、それに僕が記録した証拠を同封して、匿名で宮殿に送りつけてやった。
そしたらもう大騒ぎだ。
新聞社にも同じ物を送ったから、瞬く間に国中に情報が伝わった。
皇帝や収賄に関わっていた人が次々と捕まった。
宮殿内での様子を捉えた写真を入れてたから、政府は宮殿に居る人や、出入りする人をしらみつぶしに調べた。
手遅れなのに、告発者を調べて抹殺し、無かったことにしたかったんだろうね。
僕ももちろん取調べを受けた。
だけど、僕はちゃんとアリバイを作っていた。
告発文の消印を、魔法を使って出張中の期間に偽装していたんだ。
けれど、それで逆に疑われちゃってね。
出張のついでに出したのでは、と。
他に怪しい人もいなかったらしくて、とうとう僕は、国家反逆罪でよく分からないところに閉じ込められたんだ。
『ああ、もうダメだな』と思ったよ。
けど、不思議なこともあるんだよね。
その時、シーザとサラがたまたまウチの国に来てて、どっかで噂でも聞いたんだろうね、僕の居場所を探し当ててさ。
そこで僕は、あえて国の人間は絶対に知らないサラにこんな文章を書かせたんだ。
『収賄の告発者が不法に囚われていたが、何者かの手によって脱出に成功した。決して探してはならない。もしそのようなことがあった場合には、「Ark」の力を行使する用意がある』
僕はシーザに牢屋もどきのところから出してもらって、あいつの魔法でベガとアルタイルの家に転送してもらった。
あいつはこの手の魔法が得意だからね。
そして、シーザに文章を宮殿とメディアに送るように頼んだ。
効果は抜群だったよ。
『Ark』の脅しがうまくいったからだと思うけど。
それで、姉弟のところに居候してたんだけど、今度はそのルテンバーで革命とクーデターが起きてね。
逃げ場所がないから、皆と一緒にここに来た、って訳さ」

ここまで聞いた時点で、俺はもう満足していた。
けど、最後の一件が、一番の大物だった。
ルテンバー王国の話だ。
この時も、アロルドとミッシェルさんはいなかったので、クロード一人から事情を聞いた。

「俺が何のために『Ark』を探しに行ったか、その様子はどうだったかは知ってると思うから、お前が帰ってからのことを話すよ。
お前が帰ってからすぐに、シーザとサラが逃げ出して、その何日かあとには、ラルフがドダバタ劇を演出した。まあ、詳細は聞いてる通りだ。
で、この際俺らもやってしまおうかと思ったんだけど、ここでもう一つごたごたが起きたら、それこそ世界が機能しなくなる可能性がある。
だから、あえて二つの事が一段落するのを待って、革命の火種を蒔いたんだ。
俺は王室関係者という肩書きと、『ミミック』という偽名で、国民と王室の現状を訴えた。
そしてその文面の最後に、こう付け足しておいたんだ。
『私は最初にも述べた通り、王室関係者である。そんな私がこのようなことを言うのは、ルテンバー王国の行く末を案じているからこそである。民衆よ、立ち上がるなら今が最良のチャンスである。大丈夫だ。権力側にも、皆の味方はいる』とね。
じきに、国民の間で革命軍の組織が始まった。
けれど、国民のことを気にかけていない政治家は、それに全く気付かないし、俺の書いた文章も知らない。
そうこうしている内に、準備は整った。
俺は真夜中に仮面を被って城を抜け出し、革命軍のところに行った。




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