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ユーミンの放ったナイフは、グサリ、と何かに刺さった。
そして彼女は、その「何か」を探した。
だが、暗さのせいで、それが良く見えない。
「どこにいるんだ……おっと」

「何か」は再び彼女を襲った。
すぐに彼女は、数本のナイフを構え、放った。
しかしナイフは、「何か」には当たらず、闇に消えた。
上手く避けられたようだ。
その上、相手も攻撃を仕掛け、それが彼女の身体のあちこちに当たった。
それによって受けたダメージは意外と大きく、全身から出血しているのが見なくても分かった。
「ちっ、」
彼女は小さく、舌打ちをした。

この時点で、「何か」について分かっていることは3つ。
1つは、ナイフが刺さっても怯まない、つまりタフ。
2つ目は、「何か」には、彼女、あるいは彼女の放ったナイフが見えている可能性が高い、ということ。
3つ目は、広範囲に攻撃ができ、ダメージも大きいこと。

一方、彼女にはその「何か」がよく見えない。
このまま戦闘を続けても、武器が当たらなければ、相手の攻撃をさらに受け、体力を余計に消耗するため不利になる。

彼女は「何か」と一旦間を取り、呟いた。

「……本当は使いたくないんだけどな」

そして目を閉じ、唱えた。

ーー『キャッツ・アイ』(猫の目)、開放。

目を開けた時に見えたのは、先程までとは異なる、明るい世界だった。
その中に、あの「何か」がいた。
それは、巨大な鳥で、皮膚は羽毛ではなく、硬い鱗で覆われていた。
羽にはナイフが刺さっているが、やはり影響はほとんどないようだ。
まさにアンノウン・アニマル(未知の生物)である。

「見たことないな。しかもナイフが効かないとなると……」

「さて、困った」

今、彼女はナイフ以外の武器を持っていなかった。
これでは相手にならない。

その時、巨大な鳥は大きく羽ばたき、彼女に迫った。
「!!」

危ない。
しかし、そう思った時に、彼女は思い出した。
今、新しい魔法を研究しているのだった。
だが、実戦で使ったことはまだない。

一か八か。
その魔法に賭けることにした彼女は、ナイフをしまい、血まみれの右腕を高くあげ、大きな声で唱えた。


「『ファイア・トルネード』(火の竜巻)!」


瞬間、森は炎に包まれた。

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