5



夜明けを待つことにしたローリーとサムは、暗い住宅街をウロウロしていた。
北から冷たい風が吹き、二人は思わず身震いをした。
ローリーが言った。
「寒いな。もう一枚持ってこりゃ良かったかも」
「しょうがないさ。この寒さは予想外だし」
はあ…、と白い息をサムが漏らした時、

後ろから、足音が聞こえてきた。

「誰だ!!」

ローリーが銃を構える。

が、近づいてきた人の返事は。

「俺は悪者じゃない。ただの一般人だ」
「はあ?何言って……」
「だから一般人だって。分かったならその銃を下ろしてくれないかな」
「……サム、あいつから何か感じないか」
「全く感じない。間違いなく一般人だ」
「そうか。なら良しとしよう」

ローリーは、銃を下ろした。


                ◆


「で、名前、教えてくれないか」
ローリーが尋ねた。
「ああ。俺の名前はジャック。ついさっきここに来たんだが、誰もいないし、道も分かんないから困ってたんだ。君達は?」
「俺の名はローリー。この国の人々を元の世界に帰すために来たんだ」
「俺はサム。目的はローリーと一緒だ。良かったら、俺達に協力してくれないか?」
「もちろん、構わないぜ」
ジャックは快く了解した。
「で、君達は他に仲間はいないのか?」
ローリーとサムは、顔を見合わせた。
「……それが、あと3人いるんだけど、ここに来たときにはぐれちまってなあ」
「どこにいるかも分からないんだ」
2人は、困った表情で言った。
「うーん……ん?」
ジャックも悩んだが、何かに気づいたようだ。
「どうした?」
「何か……聞こえる」
「え?」
そんな会話を交わしていると、どーん、という、地響きのような音が聞こえた。
「どこからだ!」
ローリーが大声を出す。
「こっちだ!」
今度はサムが言う。
彼は、ジャックと共に既にその方向に走りだしていた。
「了解!」
ローリーも、2人の後を追って走り出した。


                    ◆


辿り着いた先は、炎の海に包まれていた。
「ひでーな……」
ジャックが言う。
「どうする?」
「水があったら消火できるけど、ここにはないみたいだな」
「じゃあ見守るしかないってことか?」
「そうなるな」
3人で話し合ったが、いい案は出ないようだ。

すると、どこからか声がした。

「水なら大量にある」

3人は一斉に声の聞こえた方向を向いた。

そこに居たのは、一人の男だった。

「リッキー!」
「お前どこに居たんだよ!」
彼を知る2人が駆け寄った。
「気がついたら海岸に立ってたんだ。ついでにここの地図も拾った」
「やるじゃねーか。見せてくれ」
そう言って、2人は地図を覗き込んだ。
「えっと、俺達が住宅街から来て、森がここにあるから、」
「今、だいだいこの辺りだな」
サムが現在地を指で指した。
「……あの、君達、火事と俺を忘れてないか?」
会話を聞いていたジャックが、恐る恐る3人に尋ねた。
「「あ」」
先ほど彼と知り合った2人は、しまった、という顔になる。
一方、彼を知らないリッキーは、彼に尋ねた。
「ん? 君、誰かな?」
「ジャックです。ついさっきここに迷い込んでしまって、偶然会った2人についてきたんです。……って、早く火を消さないと」
「おっと、そうだったな。ならさっそく海に……」
リッキーがそう言いかけた時、フッ、という音がした。

4人が振り向くと、炎は消えていた。


                    ◆


「あれ? 自然に消えたか?」
リッキーが言う。
「あれぐらいの炎なら、あんなに早く消えることはないはずだが」
ジャックも頭に疑問符を浮かべている。
「……ローリー」
「何だ?」
「……魔力を感じる」
サムがそう言うと、ガサッ、という音が聞こえた。


「あれ? お前らいつから居たんだ?」

現れたのは、血まみれのユーミンだった。


「壷の国」地図は『画像倉庫』へ


[ 8/73 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -