命短し




命短し






「好きです、左之助さん…」




その言葉を信じていればよかった
その涙を拭ってやればよかった

俺も好きだと、伝えればよかった






そう強く後悔したのは、
つい、先日。




突然拓から好きだと言われた次の日だった。

告白された時は、次からどう接してよいものか、
あやふやな態度で誤魔化したために、
悩んでいた。





「左之さんっ!!」

「どうした平助」



いつも慌ただしい平助が、より慌ただしく部屋に入ってきた



理由を聞けば、斎藤の隊が任務に出て何者かに奇襲されたらしい。

帰ってきた隊員はみな負傷し、
その中には死者も出た、と。





急いでその隊員たちの所へ行くと、みな傷付き、つかれきっていた。




「斎藤!平気か!?」

「…大事、ない。それより…あいつが…」

「あいつ…?」



斎藤の視線を追うと、
そこには拓が仰向けになり動かなかった。
いや、かすかには動いているかもしれない。

すぐに山南さんがかけつけ、拓を治療した。


だが、
血が止まらない。

溢れてくる。



「おい…拓っ…!!しっかりしろ…!」

「左之助…さん…?」

「!そうだ…!俺だぞ!」

「はは、もう、口聞いてくれないと…思ってましたよ」

「…っ」

「ああ、でも。最後に、左之助さんと話出来て、嬉しかった…です」

「やめろ…最後とか…言うんじゃねぇ…!」




そういって、俺は何故か涙がでそうになった。
畜生、かっこわりぃ。



「俺…まだ左之助さんが、好きです…。左之助さんが俺を…嫌い、でも…」

「拓っ…」

「っ…がはっ…!」

「っおい!」



いきなり血を吐き、目が虚ろになってきた拓に俺は動揺した



「俺もお前が、好きだ…!!」



次にはその言葉が出ていた。

なに言ってんだ俺。

周りには山南さんや土方さんやら皆いるんだぞ?




「は、…嬉しいな…ぁ…両思い…ですね」

「ああ!両思いだ!!だから今夜は酒に付き合えよ!寝かせねぇ!」

「はは、楽しみ…だな」







楽しみだと言ってから、
拓は顔を歪ませた。

苦しいのか、息も絶え絶えになってきた。








「左之助、さん」

「!なんだ?」








「死にたく…ないなぁっ…!」




「!」




そういって静かに涙をながす拓




「ばか!死ぬんじゃねぇ…!」

「左之助さんと、もっと話したか…た、皆と…もっと仲良く…」




目をとじかける拓に必死に声をかけるが、
やはりもう…




「おい!起きろよ!明日はな!下町に連れていってやる!でーとってやつだ!楽しみだろ!」

「やったな…たの…しみっ…」

「だから寝るなよ?な!?」

「 …左之助、さん」

「なんだ!」





「あり…がと……、」






それがあいつの最後の言葉だった。



死因は出血死。
討たれた場所が急所だったために、
間に合わなかったのだと、山南さんは言っていた。



命短し
もう一度でいい、言わせてくれ

好きだと、恋したっていると、


愛していると。






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