04 温かさはいらない


もらった鍵でバーボンのマンションに帰ると
ドアを開けてすぐのところに彼は立っていた

その顔はいつもより少し悲しそうに感じた、


「えっと、遅くなってすいません。」

「少し調べさせてもらいました」


そういいながら彼は内開きの玄関のドアに私を追い詰めた
首の横に彼の腕があり 抜け出すことはできない



「君は僕をターゲットにして、ノックの調査をしているんですね」

「なぜそれを、」

「ベルモットとの会話を盗聴させてもらいました。
まぁ、まだ何もわかっていないみたいですけど。
ターゲットに依頼内容がバレてしまっては、
もう調査は続行不可能かと、どうです?」

「あなたは、ノックなんですか?」

「...さぁ、どうでしょう」



目の前の不敵に笑う彼の顔はやはりどこか傷ついているような感じた。



「正直、あなたが組織を裏切っているかなんて
下っ端の私にはわかりません、でも。
安室さんとして喫茶店で働くバーボンさんは
少し楽しそうだったし、今朝の笑顔!わたしは!
私は、本当に好きだと思いました。」

「愁...」



だんだんと涙が溢れてくるのがわかる。
こんなんじゃ、組織の人間として失格だ。
感情に流されて、任された仕事もろくにこなせない。
孤児院にいた頃と全く変わらない。出来損ない、
でも、



「私、あなたが嘘つきだとしても、あの笑顔は嘘じゃないって信じたいです…!…きゃ!」



急に引き寄せられたかと思うと、
気づけば私はバーボンさんの腕の中にいた。
その瞬間目にためていた涙が大粒になって溢れた。


「君はすごいな、」

「え…?」

「ポーカーフェイスなんていうけど、君には崩されてばっかりですよ。愁」



そして強くぎゅっとまた抱き締められ、離された。
少し離れたバーボンさんの目を見つめると
見つめ返され、また顔が近づき、唇と唇がふれた



「…え」

「あ、…つい。すいません」

「つ…つい?」



今のは、完全に、キスだ。

キ… キスだ!!


そうわかった瞬間涙も吹っ飛んだ。



「つい!?バーボンさんってついで誰にでもキスしちゃうんですか!?」

「いや!そういうわけでは」

「どういうわけなんですか!?私、キスしたことないんですよ!?大切なファーストキス!どうしてくれるんですか!」

「ファーストキス?」

「…ハッ!〜〜〜〜っ もう知らない!」

「愁っ」



私は靴を脱ぎ、その場から逃げるように
そのままバスルームに向かってシャワーを浴び、
バーボンさんを見ないように寝室へ帰った。












しばらくして、部屋で髪を溶かしていると
コンコン とドアをノックする音が聞こえた。
返事はしなかったが、ガチャリとドアが開き
バーボンさんが入ってきた。

手にはなにかお酒とミルクを持っている。



「愁、一杯、付き合ってくれませんか?」

「…一杯だけなら」



ムスッとしながら答えると フッと柔らかく笑い
リビングのソファに私を促した。



「カウボーイって知っていますか?」

「え?馬に乗ったり縄投げたり?」

「まぁ、それもカウボーイですけど。カクテルの名前なんですよ。
氷の入ったグラスにバーボンを注いでミルクで満たし、砂糖をプラスしてナツメグを振りかける。」

「ウイスキーの牛乳割りですね!」

「カウボーイです。ほら、飲んでみてください」



渡されたグラスを恐る恐る一口飲む。
ウイスキーというからキツいイメージだったけど
ミルクが加わることにより口当たりもよく
ウイスキー独特の辛さがマイルドになり飲みやすい



「おいしい…」

「…カウボーイっていうカクテルは、アメリカンウイスキーの中でもバーボンで作るカクテルなんです。スコッチで作ると名前が変わってしまうんですよ」

「へー!私、これなら何杯でもいけちゃいそうです!」



お酒はあまり強くないけど、これならいけると
ゴクゴク飲んでしまう。
そのせいか、回るのが早い気がする…あつくなってきた…



「愁はコードネームがまだ決まってないんでしたね」

「はい まだなんれすよ」

「ミルク、なんてどうですか?」

「? それ、お酒じゃないじゃないれすか」



頭の回転が緩くなった私は、ろれつが回らない口調で言葉を返す
気づけばもう3杯目だ。気持ちよくなってきた。



「ウイスキーとミルクは相性がいいみたいですよ。それに、愁みたく、優しい味で、辛(つら)さを和らげてくれる。ぴったりじゃないですか」

「バーボンしゃん…」

「はい?」

「そんな歯の浮くようなしぇりふ…酔っていますね?」

「ふ…そうかもしれませんね」



そういう彼はもう何杯目なのかわからない
お酒、強いんだろうなあ

なんてバーボンさんをジッと見つめていると
バーボンさんも私を見つめる。
彼の綺麗な顔がだんだんと私に近づいてくるかと思うと
また唇を重ねられた。

深く、さらに深く 離しては重ね
何度も何度も口付けをする
酔いのせいもあり、苦しくなって少し離れる

肩で息をする私をみて、
バーボンさんは舌舐めずりをする


「バーボンさん…なんか、えっちです…」

「…そういう君も、ね」



そう言って肩を押されてソファに押し倒される
目の前に見えるのは天井と、そして自身のワイシャツのボタンを外すバーボンさん。
そんな情景に、胸がキュンと高鳴る


「僕はあなたを…」

「私はあなたを…」



そして私達は、何度も、何度も、身体を重ねた。




愛してはいけない、のに。















mae tugi

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