05 失ったのは退屈な未来



チュン…チュン・・・




カーテンの隙間から差し込む光と
鳥のさえずりで目が覚めた。
少し肌寒さを感じて布団に包まる。
と、横を見ると隣にはスヤスヤと寝息を立てる
バーボンさんがいた。

近くで見ても、やはり整った顔立ちだ。
ほんとにモテモテなんだろうな、大変そうだ。

そんな彼とあんなことやこんなことをしたことを思い出して
静かに布団の中でもだえる。

よく見ると、彼の左腕は私のほうに伸びていて
一晩中腕枕されていたことがわかる。



少し意地悪をしてみたくなって、
寝ているバーボンさんのほっぺたを優しくつねってみる。

・・・変な顔だ。

そんな顔、絶対にほかの人には見せられないだろうなあなんておもいながら
普段見ることができないその表情にニヤニヤしてしまう。





「いたずらはよくないですよ。」

「へ、」



起きていた彼は、腕枕をしていた腕を曲げ、
私の腰を引き寄せ抱きしめた。
腰がキュンとなるのがわかる。



「よく、ねむれましたか?バーボンさん。」

「ええ、激しい夜だったのでね。」

「何でそういうこと・・・」

「クスクス。」





だらだらとじゃれあった後、
朝ごはんを食べるためにリビングへ向かった。



「あ、そうだバーボンさん。いや安室さん」

「なんですか?安室さんなんて急に」

「わたしにもハムサンド教えてくださいよ」

「いいですよ」




ハムに薄くオリーブオイルを満遍なく塗り、
マヨネーズに隠し味程度の味噌を入れてよく混ぜる。
レタスをお湯に浸し、蒸したパンにソースを塗る。
用意した材料をはさめば完成だ。



「意外と簡単なんですね!」

「ええ、パンは見切り品でもおいしくなるんですよ。」

「いいこと教わっちゃったな、」



満足になった気持ちで
二人で作ったハムサンドをほおばる。

ひとつのテーブルを二人で囲むこの光景、なんだか



「夫婦みたいですね」

「え?」

「・・・いや!そういうわけじゃないんです・・!!!ただ
思ったことを思わず口走ってしまっただけで〜〜〜!!」

「ハハハ、でもそうですね、夫婦になったらこういうのが日常なんですよね」



ニコニコとそういうバーボンさんをみて、
なんだか少し、顔に熱がこもった気がした。





「・・・私、バーボンさんの任務から外れます。」

「愁・・・」

「きっと、きっとバーボンさんは表の人間なんですよね。
あなたは裏の人間にそまってはいけないんですよ。
・・・今日、ベルモットに任務続行不可能との報告をしてきます。」

「でも、そしたら愁の身が」

「大丈夫ですよ!いざとなったら逃げますから!
逃げ足は速いんですよ!」

「・・・しかし」

「これは私の決めたこと。私の任務です。
私が決着をつけるべきことなんですよ。」




もう決めた、邪魔はしないで



そう思いをこめて彼を見つめる。
バーボンさんは納得がいかないような顔をしながらも
ため息をついてコーヒーを一口含んだ。





「無茶は、しないでくださいよ」

「フフ、約束はできませんけど!」











- - - - - - - -



セーフハウスへ向かうため、ベルモットに連絡をし、
バーボンさんのマンションを出ようとする
と、突然後ろから彼に抱きしめられた。
私はそっと彼の手に自分の手を添える。


「必ずまた戻ってきます。」

「・・・気をつけて」





そうった私にも、彼にもわかっていたのかもしれない
もう普通には会えないんじゃないかということが。












マンションを出て1キロほど離れた道のところに
ベルモットが待っていた。


「ハアイ、キティちゃん」

「・・・大事な話があるんです。」

「フフ、まあ大体はわかるけれど。きなさい、埠頭でジンが待っているわ。」





私はベルモットに連れられ、セーフハウスではなく
ジンが待っているという埠頭に向かった。




きっと、バーボンさんならわかっていたかもしれない。
ジンが来るということ。セーフハウスではないこと。

これがどういうことなのか。














mae tugi

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