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入学してから今まで、君はずっと俺の隣の席だった。
その頃から手懐けるまでずーっと笑顔をしていた。
下手くそな能面みたいな。
授業中でさえだぜ、マジで。
「ねぇ、あー」
「……業君?」
今は昼休み真っ只中。
そんな時間帯がやってきて、俺は隣の席の君の机に自分を椅子ごと近付けた。
向かい合う形で机に両腕を乗せ、首を君に伸ばす。
顔を近付けたら君は不思議そうに首を傾げてしまうだけ。
分かるでしょ、何をするべきかなんて。
「だから、あーん」
「ぁ、どうぞ」
はぁ?いや、さ、お弁当を前にして君は卵焼きを挟んだ箸を折角掴んだのに卵焼きはまた仕舞われて、箸ごとお弁当自体を俺に差し出す。
あのさ、俺はあーんって口開けてる訳じゃん。
「xxx、馬鹿なの?」
「ぇ…でも…」
「俺はxxxに食べさせてくれ、っつってんの。つーか、マジで有り得ない。彼氏が彼女のお弁当前にして口開けてるんだよ?決まってるじゃん」
「………で、ですけれど此処は教室ですし…」
「あー、そんなこと言っちゃう?良いのかなぁ。此処は教室だよ?xxxのさっき咥えた箸付きで鈴木達に売って来ようかな。xxxの唾液を鈴木
達が舐め回して、丁寧に作った卵焼きにタコさんウインナーを食べる訳だけど…」
「や、嫌!そのような…嫌ですっ」
「ほら、嫌でしょ?だったら俺に食わしてよ。あ、でもxxxは俺のこと嫌いみたいだしな。やっぱ売って金貰える方が得策だね。貸してよ、xxx」
「そんな、業君っ」
手を差し出すけど、まぁ、そんな気はサラサラないよね。
ニッコリ笑って見せると、俺を映す瞳にゆらゆらと膜が出来る。
首を小さくかぶって差し出した筈の箸をまた自分で握る。
あーあ、とうとう泣き出しちゃった。
「xxx?ホラ、泣くなって。泣かなくて良いよ。全く、最初からすれば良いのに。あーん」
「卵焼きで良いですか?」
伸ばしていた手を君の顔に寄せて零れてしまった涙を拭ってやる。
口を開ければ恐る恐る卵焼きを挟んだ箸を俺に近付けた。
口腔に入り込んだ卵焼き。
噛み砕けば味付けは醤油と砂糖っ、いつもと同じ君の作る味付けだ。
咀嚼して美味しいじゃん、なんて言ってやればふんわり優しく微笑を浮かべる。
そういう笑顔なら好きだけどさ。
でも、泣いてしまった揺れる瞳が俺を映すをやだけれど…何か駄目だな。
たっぷり塗られたリップクリームの効果も相まって、何処となくイイカンジ。
ムラムラくんじゃん、xxx。
「xxxー」
「はい、業君。何ですか?ぁ、次はアスパラ巻きですよ」
「ん、」
アスパラ巻き、肉団子、ニンジングラッセを食べ切ったら俺は結局、君からお弁当そのものを奪い全て食べ切る事にした。
君には後でアイスでも驕ってやろ。
あ、その前に俺のパンやれば良いんじゃん。
お好み焼きパン。
セブンのね。
「xxx、次の授業教科書見せてよ」
「業君、全て教科書置いてらっしゃるんでは?」
「えー、駄目?」
「別に駄目だなんて…。私ので良いのですか?」
「だって、忘れた事にすれば机をくっ付けられるじゃん。って事はxxxと近いままで授業出来るんだよ?俺と近いのは嫌かな、xxxは」
あからさまに、しゅん…と項垂れてみせる。
慌てて、更にあたふたなる君が面白い。
俺は、じゃあ良いんじゃん!と椅子だけではなくxxxの机と真横にくっ付けた。
うん、これで出来る。
fin…xxx
2013/10/15:UP
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