海軍緊急招集

「センゴクさん、俺聞いてないよ」
「"寵姫"ステラを取り逃がした事への処罰なら、まだ言ってない」
「違ぇよ、ステラちゃんが白ひげ海賊団に入ってた事と、能力者だってこと」


青雉の愚痴に、センゴクはぴくりと眉を引き攣らせた。
センゴクとて、ステラの情報に関する天竜人の頑なな態度には、いい加減辟易している。

ステラの写真一枚以上、さして特徴になる情報を提供しないのだ。そのくせ、一日に何度もまだかと聞いてくる。
まだも何も、迂闊に手が出せないところに居るのだが。

万一、青雉の失態がばれたなら、青雉が撃ち殺されかねない。ロギアなので死なないだろうが。


「センゴクさん、わっしが行きましょうかねぇ〜……」
「何を言うとるか、黄猿!戦争でもおっぱじめる気か!」

「そうは言うけどねぇー、サカズキ……もたもたしてはいられないでしょう」

「戦争覚悟で奪取に向かわねば得られんものを、求めてくれるなと言う話だ。奴隷なら沢山おるのに、なぜそうもステラとやらに執着するのか分からん」


サカズキの言葉は尤もだ。
一奴隷に過ぎない筈のステラを、正妻に据え、逃げられた後も愛してやまないチャルロス聖が理解できない。

シャルロア宮は日毎どころか二時間おきに電話してくる。

ロズワード聖までもが、ステラはまだか、と書いた手紙を毎日送ってくる。
手紙は、山羊の餌になっていた。


「だが、残念ながら、手に入れられませんで済ませられないのも事実だ……」


ばたばたばたと、伝令の走ってくる足音が聞こえて来た。
何事かとうんざりしながら見れば、伝令は真っ青になりながら、言った。


「ロズワード聖、シャルロア宮、チャルロス聖が、白ひげ海賊団を探しに……!」
「「「「は?」」」
「え、ええと、白ひげ海賊団が結婚式場の情報を集めているとの知らせを受け、天竜人三名が、自家用船で出航しました!」


白ひげ海賊団が、結婚式場?
何の冗談だと、三大将は驚き目を点にした。殺伐として、いつ戦っても平和とは無縁な海賊団が、結婚式場?


その場の四人の頭を過ぎったのは、青雉のステラとの戦闘の中で得た情報。


「……結婚式場ってー……誰と誰が結婚するんだろうねぇー……」
「「「「…………」」」」
「白ひげとステラちゃん、かね」
「青雉貴様、人が必死に否定していたことを!!」


赤犬が青雉の胸倉を掴むが、青雉はアイマスクを付けて寝たふりを始める。
黄猿はとセンゴクは、深々と息を吐いた。


「招集を掛ける。将軍レベルを呼び集め、天竜人護衛に行く!」
「は、はいっ」


伝令係が慌てて走っていく。


「戦争にならなきゃ良いんだがねぇ……」
「いざとなれば、戦争も辞さん。全く、その女も何を考えているのだか……」



寵を受けていたなら、そのまま愛されていればいいではないか。
何せ、相手は天竜人だ、この世の贅沢の限りと絶対的な安全を約束されている。

それを拒否し逃げ、海賊に身を寄せるなど、愚かだ。危険もあらば過ぎた贅沢も叶わない。海賊など、下品な輩、海のクズだ。


「自分がどれほどの価値を持つか、わからん訳はないだろうに……」



執着ぶりを見ても、身に染みるほどに愛されていた筈だ。
それが脱走のあげく結婚するとなれば、天竜人が黙っている筈がない事もわかるものだ。だが、ステラは躊躇いなく、騒動を起こそうとしている。


「……愛されることが、果たしてホントに、幸せなんかねぇ……」
「何を戯けた事を言ってるんだ、青雉!世界の平和の為なら、幸せだろうが幸せでなかろうが、身を捧げるのが普通だ!わがままで世界を混乱させるほど、そのステラとやらは愚鈍か!」
「さあな……」

ただ何となく、青雉には、ステラは普通の範疇にはまらない気がした。





「あら、スモーカー君も呼ばれたの?ヒナ安心」
「あぁ……くだらねぇ用事で呼び集めやがって。馬鹿くせぇ」
「"寵姫"ステラの奪還なんて、驚いたわ。ステラって、どんな人なのかしら。ヒナ楽しみ」
「……出航準備出来てんのか?」
「心配いらないわ、ヒナ完璧」


(天竜人に関わることならば……か)(ドレーク中尉、どうかしましたか?)(……いや、何でもない)
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