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夏も本格的に始まった休日の昼下がり。
冷房を適度に聞かせた部屋のベッドでゴロゴロしていたら、窓のところにカブトムシがいてぎょっとした。

「なんでカブトムシ……」

だって今は真昼だ。カブトムシって確か夜行性なんじゃないの?違った?おまけにカブトムシの角に紙がぶっ刺さってるんだけど。意味がわからない。本気で。えぇ?

混乱しつつもしばらくそのカブトムシを観察してみたけど、窓枠から動く様子を見せない。なんで?死んでないよね、角動いてるし。あ、なんか窓叩き出した。カツカツ鳴ってる。

もしかして、この紙取って欲しいのかな。てかカブトムシに知能あるのか?

悶々と考えながらも窓を開けて、角から紙を抜き取ると、カブトムシは役目は果たしたと言わんばかりに羽を広げ、どこかへ飛んでいった。

「……なにあれ」

そう呟いた私は悪くないと思う。

とりあえず穴の空いた紙を裏返して――見なかったことにしたい。
ぐしゃっと音が鳴って、紙を握り潰したことに気付いた。あ、無意識だった。

むわんと入ってくる熱気に顔をしかめて窓を閉める。なんなんだ。今日31度だよ?どんだけ暑いんだ。手の中の紙をもう一度見る。
……やっぱり見間違いじゃなかった。

『ツナの部屋に来い☆ リボーン』

何この星。キラッじゃないよ。こんな暑い日に外に出るなんて自殺行為じゃないの?

綱吉んちは斜め前だからそこまで苦ではない。苦ではないのだけど暑いものは暑いのだ。そして私は出来るだけ汗を書きたくない。

はぁぁ…とため息をつくと聞こえたカツカツという音。見ると、またもやカブトムシ。しかも今度は2匹。それでもって角には紙。

カツカツ角で窓を叩き続けるからさっさと紙を受け取る(?)と、カブトムシたちはまた飛んでいった。

『さっさと来い』
『レティはもう来てるゾ』

なんなのこれ。もしかして、行かないと延々カブトムシが訪問してくるの?しかも今は2匹だから次は3か4匹か。その次は……考えたくない。

そういえば郁ちゃんは綱吉の課題の面倒見てくるとか言ってたっけな……。

「暑いの嫌いなのに……」

誰にとでもなく呟く。きっちりと窓を締め切り、遮光カーテンを引いて、ベッドへダイブする。カーテンのおかげでだいぶ暗くなった部屋だけど、その隙間から漏れ出てくる光が天井の染みを浮き立たせて見える。

Tシャツの中から指輪を引っ張り出して、その表面をなぞる。肌に直接触れているはずで、普通なら生温くなるはずの指輪は、何故かいつもヒンヤリとしていて心地いい。その冷たすぎない冷たさに少し癒されて、ほぅ、と息をつく。

「……、獄寺くんとかもいるんだろうし郁ちゃんもいるなら十分でしょ」

頑張れ綱吉。

そう呟いて目を閉じた。




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