3.笑顔も涙も見つめてきたよ

3.笑顔も涙も見つめてきたよ

トイレから出ると、二番目の兄が玄関に立っていた。一番上の兄と違って辛うじて人の話を聞いてくれるこの兄は、扱いやすい兄だと思う。自意識過剰で出来上がった男なので、どうしようもないナルシスト屑だけれどな。そこを撫でれば扱いやすいいい兄である。どっちかっていうと俺よりの人間だと思ってるが、これはこれで彼も違うんだよなぁ。

「あか松か?」
「んー?」

お前今日朝から十四松と一緒にパチンコいったんじゃなかったっけ?えらい傷だらけだけれど。どしたん?と言いつつ傷だらけの兄を上から下までみると、ジーパンもボロボロになっている。ほんとお前なにがあったの?十四松と一緒に行ったけれど、あいつに投げられて上に乗られて…と言葉尻が沈んでいくが、その様子が俺にはまったくわからない。ん?投げて上に乗る?物理法則とかどこいったんだよ。十四松。

で、大丈夫なの特に頭とか。あか松お前はなんて優しいカラ松ボーイ!あーそういうのいらないんで。あ、はい…。

まっすぐした目で俺を見る。ちょっと居心地が悪くて、俺はその視線を逃れるように半歩反れて、何事もなかったかのように取り繕い居間に戻る。
あのキラキラした瞳はどうも昔から苦手だ。いや、なんか犬みたいでさ。ぼけっと見てると尻尾まで錯覚するようになったのだから。そのまま放置して踵を返す。後ろで情けない声を聞いたが、無視。いい大人だろう?ほっとく。
ぺたぺた足をならしてふすまを開ければまだ誰もいない部屋で、ちょっとほっとする。日当たりのいい場所に膝をたてて、窓から外を覗く。お日様さんさんいい天気らしいので、そろそろ氷菓子会社のメーカー株でも買っておこうかとも思う。
そんなことを思っていると、背中に衝撃。と服を後ろに引っ張られた感じと、チクチクした髪の毛の感じとちょっとのぐずぐず音に小さくため息。兄弟が何か起こせばいつも巻き込まれるのは俺なのだ。あぁめんどくさいと思いつつ、バランス論者である俺が、他をダークサイドに落とさないようにしているのだから、誰か感謝してくれって思う真ん中の位置。上からも下からも面倒なんだってば。
あんたたちがわらってるだけでいいんだって、俺は笑顔も涙も見てるけど、あんたたちには笑っててほしいの。めんどうだから。



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