ただいまー。なんて暢気な声で限界を開ける。重たい荷物を持ってアジトに踏み込んだ瞬間。違う空気が混ざっているのにすぐ気がついた。血の臭い。 何が有ったのか。だれか帰ってきた時に怪我を負ったのか。そっと息を潜めてヴェルデを呼ぶ。不意に捉えた聴覚が、違和感を訴え、音が消えた。 「…行こう」 スタンドは出しっぱなしだ。何が有っても戦えるように。銃もナイフも持たないのだ。吸血鬼から(強制的に)譲られた肉体がすべて助けてくれたのだ。片割れと家族と思い出とスタンドがいたら、例え仲間意識を持った仲間でも…私は殺すのだろうか。 階段を上る。うちのチームと仕事をしてもチーム全員のスタンド能力を知ってるわけではない。イルーゾォ、プロシュート、ギアッチョ、リゾット…5人だ…5人しか知らないんだ。 まだチームに認められてないのかしらね。ため息をついてリビングに踏み込む。部屋は暗く。真ん中のソファーに、リゾットが座っていた。 「ただいま」 「ペスカ…話がある。座れ。」 「荷物…いいの?」 「座れ」 気迫のある言い方に、違和感と感覚がイコールで繋がった。バレたか。私の本名が、か。戸惑いを浮かべて腰をかける。 「スタンドはしまえ」 「…えぇ…」 指示通りにうさぎをサッサと消すと、沈黙が降った。彼がスタンド攻撃を仕掛けてきたら私には打ち返す術がなくなった。 「ペスカ。話がある。」 「何かしら。」 身構えて、話をきく体勢を取った、そつない軽い銃声みたいな音を聞く。立ち上がろうとしたら、それと同時に視界がカ黒に染まり、背中に熱を感じる。目隠しされてるのが言われなくても解る。 「だーれだ。」 「……何のつもりかしら。」 怒気を纏わせてピシャリと言えば遠くからため息と舌打ちと背後のベネ。イラついた私が肘鉄食らわせて背後の男を怯ませ舌打ちの方向に投げ飛ばす。 「ふざけないでよ。メローネ。」 「やっぱり解った?」 ふふん。とメローネが笑う。こいつ、なにもしてなかったら格好いいのに、全てが台無しだ。メローネがそっとリゾットの方を指差したので、ちらりと見たらリゾットの背後にいるソルベとジェラートが横断幕を持っていた。 「ペスカ。改めてよろしく!」 「バール行こうな。」 ソルベとジェラートが笑顔で語りかけるのはいいが。横断幕がまったくさっぱり読めない。理解出来ない。 「…………なにこれ」 「なにこれ、じゃねーだろペスカ。テメーの為に俺達がここしばらくのスケジュールを無理やり詰めてだな」 「あ、歓迎ようこそ的な意味合いだったのか!」 「横断幕読めてなかったのかよ!アマァ」 「うっさいわよギアッチョ!」 イタリア語は喋る専門。最近報告書は写真ばかりよ。なんて言い返せば、周りから笑いの渦が起きる。かみつく気力もない。 「つまみもってきたぜぇ」 「ペスカ、ワイン、はい。」 イルーゾォとホルマジオがワインとつまみを持ってリビングに流れ込み。あれよあれよと広げる。手渡されたワインを持ち、乾杯の合図で高く掲げる。 「ペスカ。またいつかコンビを組もうぜ」 「こちらこそ。」 割れる勢いでグラスを叩き合いながら、各々ペースで飲んでいく。ちなみに私はザルだ。吸血鬼のおかげで酔わないし一週間語に二日酔いならぬ一週間酔いがたまに、程度。体質か?本当に体質か? 「ペスカ」 「なーにー?」 呼ばれて、プロシュートのもとによれば彼は既に酔っぱらっていた。うわー面倒。とか思いながらため息ついた。 前 戻 次 ×
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