ジョ長 | ナノ








ふらり。と体を動かして、一足で部屋の隅に跳躍する。その事実に驚いてか、物陰が蠢いた。音を捉えた刹那、近くのテーブルを掴み物陰に狙いを定めて投げる。影から、大きな蛇がちろちろ舌を出し威嚇をする。これが、スタンド使いだろうが、スタンドだろうが関係ない。目の前の障害は全て壊すだけだ。さしたる問題もなにもない。

「……壊す……。」

そんな言葉を合図に、蛇の脳天に踵を喰らわせる。鈍い音と同時にぴりり。と痛みが走り蛇が暴れるがペスカは気にする風体無く尖った爪で首を切る。それと同時に同じ箇所が裂傷を負う。首からだらりだらりと生温い血が滴る。そんなことを気にせず音を紡ぎペスカが笑う。
幼いように笑うその姿は、蛇と同化した唯一生き残っているスタンド使いも恐怖で凍るような笑顔であった。赤にまみれた黒は、にこやかに笑う。ここが戦場だと言う事実すら見間違うぐらいに綺麗に笑う赤に染まった女を、恐怖として認識した瞬間でもあった。

地に転がった赤色に染まったフォークを握り真っ直ぐ蛇に立つ。迷いもなく振りかぶり蛇の中心を刺す。つぷりつぷりと深く深くに沈むと同時にペスカの肩にも同じような傷が、血を流す。ただ無心に力を込めフォークを蛇に埋め込む。ぎちりぎちり。と音と同じように勢いで目の前の女が傷を広げていくのにも関わらず女は無表情で暴れる蛇にフォークを沈めた。今で一本。拾い上げた二本目を振りかぶり迷う事無く突き刺し肉を抉りちぎる。目の前の腹に赤が染まれど怯む事はない。カウンターで自信の腹が抉れても臆することなく次を握る。されど蛇が暴れ一本目のフォークが深くに埋まり沈み蛇はもがく。
この女正気じゃねぇ。蛇と本体のダメージの繋がりはない。が、迫り来る食器具の恐怖に耐えきれず。男は能力を解除し、蛇から離れ走り出す。逃げなければ死んでしまう。脳裏によぎる一文字がこびりついて離れない。
会場の外への扉を開いたら、そこから一人逃げ道を作る役目のキザな茶色タイをつけた仲間がいる。ソイツを連れて逃げなければ、なんて思う刹那、背中側から腹にナイフが飛び出た。
ぐずりと崩れ落ちても、あがき男はスタンドの名を呼ぶ。女を襲え。と指示を出すが、蛇は動かない。縫いつけられたように動かず蛇は消え男が崩れ落ちた。
点と見つめてからペスカがふう。と息ついた。

プロシュートの腕を肩に当てて首にまとわらせて、よたりと歩きだそうとしたが、力なく崩れペスカの意識が軽く飛んだ。能力もきれて体中が心臓のようにも思えたが、もう疲れた。プロシュートごめん。と吐き捨ててペスカの意識が薄くなる。

それからしばらくにプロシュートが起きた。蛇の脳天を殴れば自分にダメージが返ってきて脳震盪を起こしたのだと理解すると同時に濃い血の匂いが鼻をついて、隣で倒れてる仲間が血を流していることに気がついた。止血を施して声をかける。

「ペスカ、大丈夫か?」

揺らせど反応は鈍く、ただ「ペースト、イルーゾォ…マン・イン・ザ・ミラー…私と、プロシュートを許可する」と言う。無理すんなと言えど、ペスカはぐったりとして微かに息をしてるのを感じる。入ったら能力止めろ。イルーゾォに引き上げてもらう。と言い聞かせて抱き上げてプロシュートは誰もいない鏡の世界を走り出した。
冷たくなりゆく仲間を、しっかり抱きしめ鏡の世界の表通りを血だらけで走り抜けた。見つからない、帰宅路はアジトにあと三分でたどり着く。イルーゾォさえいれば、すぐに鏡から出て治療が出来る。プロシュートは死ぬなよ。と小さなぬくもりを抱えなおして見慣れたドア目指した。




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