ジョ短 | ナノ


茹だるような暑さのアジトで買い与えられた日陰の埃臭いソファーに寝転がり、手近にあった雑誌を斜め読もうと思ったがメローネのだったのでやめた。やることもないので、ため息をつく。埃を被っているのを見て、あれから時間が過ぎたのを痛感した。荒れた家の中に気配はない。

「ほんと、ここは変わらないわよね」

あのときから。
脳裏に浮かんだ、当時の仲間たちは笑って慎ましやかに暮らしていた。料理番があって、掃除番があって、みんなで笑って飯を食べて、メローネが暴れてそれに切れたギアッチョをホルマジオとプロシュートと私の三人がかりで押さえたりしたこともあった。まぁ、リゾットのメタリカか鏡の向こう側に置いとくのが手っ取り早いんだけどね。懐かしい日々が、頭の中を駆け足で抜けていく。
そういえば、この家を出たときに彼らはどんな顔をしていだろうかと、考えたがはっきりとは思い出せない。

「私は、あいつらが生きてるかも死んでるかも解らないから。ここに手紙を置いていくの。」

ここは私たちのアジトだから、私の家だから。ここに手紙を残すの。誰かが帰ってきたら寂しくならないようにね。と一人自嘲気味に笑って、何通かの封筒の上に新たな封筒を置いて立ち上がる。玄関に向かう。框で振り替えれば埃だらけの部屋に、私以外の新しい足跡はちらほらあって、それが誰のかなんて解らないけど、「あんたたち。見守っててよ。」私は扉の向こうにいる誰かに向けて言葉を放ち逃げ出すのだった。


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