仕事を終わらせて帰宅したのは朝早く。アジトは微妙に酒臭く、野郎ののたまう声が聞こえる。野郎たちは人が仕事中に酒盛りをしていたらしい。 呼ばずとも出てくる兎に似た相方は、まるで不思議の国のアリスに出てくるような姿で私の周りをくるくる回り、跳ねる。何が嬉しいのか、酒臭さに不機嫌なのか解らないが、どうしてそんなに飛び跳ねる。物音に気がついてか誰かがドアを開けた。 「ペスカか?」 「おはよー、ギアッチョ。起きてたの。」 「ゲームしてたんだ」 また、徹夜で機嫌わるそーね。とゴチれば、ギアッチョが横切り冷蔵庫からガス入りの水を取り出す。そんな時にふと香る鉄臭い臭い。ほかのにおいは分からないけれど、この臭いだけは直ぐに理解出来る。 嫌な体質だと思うと共に渇きが訴える。さっき仕事のついでにすましたのに。 「ギアッチョ。」 「んだよ。」 「怪我してるわよね?」 ヴェルデを呼び出せば、ギアッチョはげ。っと声を零した。クレイジーダイアモンドに姿を変えさせれば、ギアッチョは舌打ちを一つ。黒だ。 「臭いが気になるから、治させなさいよ」 「怪我なんかしてねーっつの。」 「私そういう特技があるのよねー。」 思考が血液しか考えさせない。ヤバい。と考える前に、行動していた。吸うことしか頭に入らない。ヤバい、なんて思うと同時にギアッチョに詰め寄る。私に吸血針もない、犬歯で切って吸うしかない。白い首筋しか見えなくなって、噛みきって赤で染めたい。バレたらヘブンズドアーで書き換えちゃえばしまいよ。なんて簡単に考えていたら、ドアの向こうから声が聞こえて、世界が真っ白になった。 「メタリカっ」 口から鉄を吐き出しながら、そんな声と同時にまた世界に色がつく。あ…なんて声を聞く限り、しまったみたいな声色だ。 「ペスカ…」 「リゾット、ギアッチョから血の臭いがプンプンする。」 「怪我か?」 「怪我っつー程じゃねぇつーの。」 片付けようとした取説で切った。と人差し指にほんのり赤が見える。やっぱり血の臭いアンタじゃん。なんて言えば、これぐらいどうって事ねーだろ。とキレられたので、こっちにはかなり大迷惑なんだよォ。とガンつけて、リーダーに仕事を媚びる。大量に殺せる奴。と注文をつければ、ペスカ帰ってきたばかりだろう。と休ませようとする。いやいや、この喉の渇きをなんてかしたいんだよ。リーダー。わかってよ。 「ギアッチョのお陰でやる気が出てきたから。ない?そういうの?」 「ないな。今のお前に渡せる仕事はない。」 「えー。じゃあ私死んじゃいそうになるから、簡単なの。また一週間生死さまよいそうになるから、ね?」 だめ?と首を傾げたら、無茶はするなよ。と釘を刺されたが、血が吸えるなら、やる気が出る。 「二時間で終わらせてくるわ。」 「あ…あぁ。」 ふふふ。と気味の悪い笑みを浮かべペスカはアジトをフラフラ出て行った。 「なんだったんだよ、アイツ。」 「何か有ったのか?」 「なんか、人じゃねーみたいな色気振りまいて、背筋凍るようなアイツマジでジャポネーゼかよ」 まるでなんか吸血鬼みたいじゃねーか。と漏らすギアッチョは実は正解にたどり着いていた。が、そんな浮き世離れな事を聞いても、リゾットは、おとぎ話の存在をぼんやり浮かべてそれはないだろ。と、言って、キッチンに入っていった。 「只今。」 「何でおまえっ」 「スッキリしたわー。近くまでコンセントあったから超楽勝そっと引き込んで車道にドン!。死体も写メ撮ってきたわよ。」 「お帰り。」 「ただいま。よく働いたから、スッキリしたし、気持ちよく寝れるわー。あ、起こさないでよ。じゃあね。お休みーリゾット、んでからギアッチョー。」 語尾に、星やらハートを振りまきながら、ペスカが部屋に消えた。 沈黙が降ってリゾットがペスカの部屋を指して言う。「…あれが、吸血鬼…か?」背筋が凍る。だなんて全く感じられない、キラキラした笑顔やらなにやらを振りまく学生みたいではないか。と言う。 「俺の見間違いだった。な…クソ」 ゾクゾク来るような色気もねーバンビーナだなっ。ケッと吐き捨てるようにギアッチョは言い捨てて、リゾットに飯をせかす。見間違いがて自分に言い聞かせながら。ギアッチョは頭を掻いた、脳裏に残る背筋も凍るような美女ペスカの図を必死に追い出す為に。きっとそんな事があった。なんて言ったらプロシュートもホルマジオも笑い出すだろうな。なんて思い浮かべたら腹が立ってソファーを殴る。 「あー、そう言えば、リーダー、寝癖ついてるから」 「クソアマ、早くねやがれ!」 ギアッチョの怒声が、アジトに響く。イラついたペスカがキッチリ氷柱を発射し、ギアッチョの能天スレスレに飛ばしてペスカは今度こそ消えた。 前 戻る 次 ×
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