kgpr | ナノ




「カノさん邪魔!!早く立って!!」
「キドに…鳩尾…殴られた…」
「お前早く立て」
「しゃーねーなぁ、」

シューットォ。カノの腹目掛けて蹴り飛ばす。なんか足から凄い音が聞こえるが無視だ無視。蹴り飛ばしには成功したが、痛む脚を軸足にしたので着地に失敗し尻餅をつくと同時に警官隊の一人が引っかかってキドの能力もムツの能力も解けてしまった。

「逃げるぞ!」

キドがすくい上げるように手を掴みムツを引き摺る。立たせて、団長様頼むからカノと同じ扱いしないで!痛いと連合して静止を求めて叫んだ。カノ頑張ってこれからもイジメられてくださいと痛みの中遠い目をしていたが、痛みに目を向けなければ良かったと、事態が収まってから気が付いた。

あぁやだやだ。もっと早くに気が付いていれば良かったなんて後悔ばかり。

カノが肘鉄野郎を担ぎたそうな体て言ってるのをゲラゲラ笑って 、みんなで帰った夏の昼は過ぎ夕暮れ。
ガンガンにクーラーをきかせたリビングでキドと向かい合うように座り、ただくどくど、どうしてあんなことをした。とか突き飛ばした際に怪我はないかだのあれこれ、セトが帰って来次第いつものアレが決まった。
なんだか死刑執行をされてるような気分で、胃に鉛を入れられたかと思うぐらい胃が痛かった。
見つかんないといいなぁ。後で自分の部屋に行って傷を見よう、そう決めて、ムツはふう。と息を吐き出した。

「…ディスプレイ買うの忘れた。あーやらかしたなぁ。」
「また機会があるだろう」
「ネットで頼むかー」
「まだ話は終わってない。ムツ」
「…キドはビビりすぎ。人間そんなに脆くないよ」
「お前が一番よく知ってるだろうが、」

あぁ。そうだね。キドの向こうに目を向けると、なんだか昔を思い出した。
長い袖の下に隠れた傷が、ズキズキと主張をしてるような気もする。

「一旦散歩して来る。肘鉄野郎が目を覚ましたら連絡頂戴。」
「ムツ、おいっ…待て!」

青い顔をして赤い目のムツを見てキドは声を荒らげたが、ムツは止まらず、サッサとアジトを出払った。
夕暮れの人ごみの中、紛れ込むように歩く。もうすぐ夜が来る。夜は酷く嫌いだ。幼い私は恐怖で朝をずっと望んでた。
夜は、私から、全てを持っていくような気がする。そして与えてくれるような気もする。

戻る
×