抱き上げた男ルドルフに連れられ、また年が過ぎた。サメラは無口ながらも、お手伝い程度にルドルフが運営するキャラバンに混じり働き出した。 サメラにとって飼い主のいた場所となにもかもが違っていた。飼い主が絶対的な国だとすれば、ルドルフが中心かと思えば彼の奥方が全力で殴りかかる下克上もよく連発する。例えるならばここは一つの仲良い兄弟のような。 「サメラ。いるのかのー」 呼ばれたサメラは気がついて、抱えていた荷物を近くの荷台に置いて、サメラは駆け寄った。白髪の目立つ薬使いの婆様だとサメラは記憶していた、時稀に薬草を取るために一緒に行動するが、団長からの指示の後だから、また別件なんだろう。疑問なんてサメラは無いが、とりあえず駆け寄りサメラこてん。と首を傾けた。 「薬を作るのを手伝ってくれんかのー。」 人手がたりなかったらしく、サメラは縦に首を振り、作業中の説明を受ける。簡単な作業に返事をし、材料を受け取り指示通りに動く。たまに遠目で見ていたりしたが、手元で変わる変化が真新しくてサメラは目を輝かせ変わり行く様を見つめ目を輝かせていたら、手が止まっていると怒られて思い出したように手が動き出した。 鍋を混ぜたり、素材を切ったり裂いたりしているとキャラバンの料理人を思い出してクスリとサメラは笑う。 「どうかしたかいサメラ?」 声をかけられサメラはふるふる首を横に振った。薬を扱う魔術師の婆様は白い瞳と緑の瞳が緩やかに弧を描いた。 片足をなくした武器屋、聞こえない奇術師、喋れない商人、腕をなくした占い師。様々な人間が、肩を寄せ会い生きている。心を無くしたサメラもまたそのひとかけらを担おうとしていた。 「サメラ。お前さんはなにかしたいことはあるのかの?」 手を休めることなく投げられた質問にサメラは首を傾けた。生きるために微力ながらの手伝いは出来る。意味合いが解らずにサメラはうんと考えたが、上手に想像が出来なかった。 「サメラはずっとお手伝いだけではダメだろう?」 何かを作り売るも良し、何かで魅せて商売をするも良し、まぁ団長と話をしてサメラ自身が決めなければいけないがねー。無いものばかりの人間だから助け合うようにだよ。 諭すような声色は違和感なくサメラに溶け込んでいった。 前 戻 次 ×
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