ルドルフ | ナノ



飛空挺から魔物が降り落ちて来るのを確認して、サメラは道具袋をギルバートに託した。万が一有ったら仲間を。と言葉を投げて。降り落ちてくる敵の数が予想よりも多いが、足場が沢山あるのは良いことだ。自身が怪我をしてもギルバートには血止めの薬なら最低限、大刀に隠してある。ある程度なら問題はない。

手には大刀、背中に矢筒にいれた槍。腰に形見の武器、とファブールで買ったばかりの爪とボウガンのセットが擦れ合ってガチャガチャと音を鳴らす。

「サメラ、防具を着込まなくて大丈夫なのかい?」

心配そうにギルバートが問いかけた。サメラは気にするそぶりもなく、屈伸運動を始め、伸びをしながらギルバートに返事をした。「随分適当に挨拶されてるからな。速攻で叩き潰す。」

そう言い切って、一言加える。「頭上は注意しておけよ。」と、ニヤリと笑ったサメラが壁を蹴り、すいすい上に上がり天辺から軽い跳躍で空から降る魔物に飛び乗る。
爪で羽を切り裂き、羽ばたいても無意味な用にして、次の魔物に写り魔物の首を刈り取り、また違う魔物に飛び乗り投げ槍で襲いかかろうとする魔物を狙い射る。

「それで軽装なんだ…」
「……」

地上からサメラを見つめる目は、小さな黒い点を見た。導師のようなロープだけで何をするかと思ったら、こんな事ができるなんて。とギルバートは他人ごとのようにサメラを見つめた。

「サメラってすごい…」

武人革命っていう名前をしているだけあってか、そんなに戦うために特化したような感じに見受けられないのにね。
話しかけるために、ちらりと隣の戦友を盗み見た。フルフェイスの兜のせいで何を見つめているか、なんてギルバートは知らないが、きっと、あの飛ぶ姿に誰かを重ねてるのではないかと、ギルバートはなんとなく察した。バロンに残した誰かだなんて、こちらから聞くのも、どうかと判断してサメラから託された荷袋を開いて、在庫の確認を行うまでもなかった。袋一杯のポーションと一束のフェニックスの尾。
この重さが、彼女が背負っていた負担なんだと思うと、彼の中で勇気が沸いてきた。

「セシル、ヤン。行こう。サメラにばかり戦わせていれないよ」
「…あ。あぁ」
「そうですな。行きましょう。」

そして彼らの戦闘も始まるのであった。


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