遠くでざわざわと音が鳴る。サメラは土を踏みながら前を見据えた。森を抜けた眼前には、雪解け水のおかげで緑豊かな森に囲まれた国。ファブールがそこにあった。 「ただいま帰った!」 ヤンの一声に城門が開き、若い僧がわらわらと寄り、背後にいたサメラ達に気がついて深々と僧達が頭を下げた。 手を組み頭を下げるのを見て、サメラも足を揃えて手を組み高くに上げて、頭を伏せた。一礼をして頭をあげると、ローザから奇妙な視線を浴びているのに気がついた。 どうかしたか?と聞いたら、今のってなに?と聞かれて、慣れない物だったかと気がついた。 「ファブールの最敬礼だ。」 「サメラはなんでも知ってるのね」 「たまたまだ。」 エブラーナは、背筋を伸ばし、お辞儀。と呼ばれる礼法だったり、色々あるが気にする必要はないだろうがな。バロンは…敬礼だったな…まぁ、大体国に入ったらまっすぐ謁見に向かうから覚えたがな。ふと進行方向を見たら王の間の一歩手前にセシルたちが早くと急かすように声が飛んできてサメラはコンパスの差が大きいリディアを拾い上げて、ヤンたちのあとをゆっくり追いかけた。 王の間に向かう最中リディアがきらきらの目をして、「サメラって、凄いね!世界中の人と挨拶出来るんだね!」なんていう。 「出来るんだねそうだな。世界中…か。」 世界中平和だったら、お前と私は出会わなかっただろうな。と言いかけて、言葉を飲み込んだ。未来や違う世界だなんて言っても仕方ない。ぼんやりあればアレさえ無ければ、とも考えてしまうのは、悪い習慣だとサメラは頭を振り意識をそらした。 「世界中なぁ。旅のルートはあらかた決まってるからな…」 エブラーナミシディアバロンカイポダムシアンファブールトロイア。人が沢山集まる所じゃないと商売にならないしな…。 「とりあえず謁見が終わったらみんなで飯でもするか。おなか空いたか?」 「うん。」 よし、謁見が終わったら軽く食べるか。大人しくしてろよ。と言葉を発してサメラは、リディアの頭を撫でていたらふと違う声が聞こえた。 …娘、…。確かにそう聞こえた。知らない声がそう言った。何だったんだろう。と考えるまもなくリディアに呼ばれ、慌てて王の間に滑り込むのであった。 前 戻 次 ×
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