ルドルフ | ナノ



炎が収まり朦朧とした意識でサメラは前をみたが。赤い魔物が大きな口を開いて笑っている。昔みた夢みたいだな。とお母さんの存在がふと頭に蘇った。傷だらけのサメラを魔物が嘲笑う。
あの日はどんな日だっただろう。
ぽっかりと覚えて居ない記憶は、思い出す事はない。

「おか…あ…さん。」

具合が悪かったのに、どうしてあの日家から出たんだろう。なにも感じなかった疑問が湧いた。最後に聞いたあの声が頭から離れない。

「サメラ、大丈夫?」
「…あ…ま、まぁ。な」

リディアが寄ってきたので抱えあげて、頭を撫でてやれは彼女は満足そうに笑った。日常の荷物を拾い上げて、サメラは、生き残ったモンク僧に足を寄せた。

「危ないところをかたじけない。私はファブールの僧長ヤン」

話を噛み砕けば、山で修行として北側魔物の大群に襲われて、彼を残して部隊は全滅した。とのことだ。
どうにも、タイミングが良すぎる。ような気もする。とサメラは訝しんだ。

「サメラ」
「狙っていたのかも知れない。」
「なんと…」
「奴らの次の狙いはファブールだろう。」

鋭い銀がそっと伏せた。ファブールもまた、キャラバンのようになるのだろうかと考えたら、ぐっと力が入った。

「ファブールのモンク僧の壊滅。主力戦力の低減か…。辛い戦いになるだろうが、この戦いは我々の戦いでもある。我々は、仲間を、愛しい人を、肉親をゴルベーザに奪われた。だから、我々は力になりたい」
「誠か…。」

泣くのを絶えたのか目を赤くしたモンク僧が、かたじけない。東の山を超えればファブールはすぐそこ。半歩身を引いて、手で示したのは、来たときと真逆の道だった。
ちらりと太陽を見れば、空の雲が濃く見える。早く行かねば日はくれるだろうし、雨も降りそうな雲の顔をしている。リディアを抱きなおして、山道を下りだした。

「サメラ、ファブールってどんな国?」
「ヤンみたいな人、素手で戦うモンクの高僧。坊さんみたいなのがが居る国だな」

エブラーナの多神教に負けず劣らずの、数多の神と、幻の生物を崇高している国家だ。、ボブスの山々がそびえ立つ膨大な領地、豊かな海の幸山の幸があって、飯は美味いが、宗教的なことにより酒はあまりないなぁ。

「サメラ、サメラ。解説しすぎて文字数足りないよっ!」
「まぁ。諸君達のほうが詳しいだろうに。割愛だ」



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