ルドルフ | ナノ


「サメラ、何か聞こえるよ」
「ファフールの僧が修行してるんじゃないのか?」

手を翳しながら山の頂を仰ぎ見れば、炎がちらりと蠢いた。なにか、可笑しい。妙にざわつきを感じる。

「すまない、先にちょっと見てくる。リディアを頼む。」

そっと下ろしてサメラは風のように、ふわりと背負う大刀の重さを感じさせないような動きで、駆けた。最後の岩場を蹴り、空に浮いた瞬間、山頂は地獄のようにも見えた。
ボム種の魔物が息絶えた人の肉をくらい、また新たな獲物に牙を向ける。魔物の一匹がサメラに気がついたらしく大きな口を開くので、その口目掛けて大刀で真っ二つに分けた。

「生存者はいるか!」

ポーションの仕舞場所を思い荷物袋に手をかける。音を聞いた先に走り荷物のポーションを僧にぶっかける。自体は一刻も争い、魔物はサメラに木場を向ける。大刀を使っといたら埒は開かない。荷物の中から、刃渡りの短いダガーを取り出した。

「片っ端からカタつけてやるよ。」

サメラは地を踏んで、一匹目に狙いを定めた。武器を槍状に畳み変え、一突き。そして、槍の穂先についてくるボムの亡骸をそのまま使い、他のボムにぶつけホームランよろしくぶっ飛ばせば、ほかの一体も巻き添えを食らい、山から落ちた。セシルたちと遭遇するなよ、と呟いて、槍を双剣に形を変えて、斬撃を加え踏みつけて空に上がりサメラはアイテムを取り出して地面に向かって投げた。

「南極の風」

壊れた音と同時に真冬のエブラーナを彷彿させる冷気が山肌を舐める。この冷気を浴びても魔物の生き残りは居るらしく、魔物とサメラの目線が合った。
魔物は口から火を吐きだしてサメラは空中に居るが故に避けることができず直撃し地面に落ちて山肌を転げ落ちる。
石も砂も巻き込んで、勢いを殺し、サメラが立ち上がれば、セシルたちが駆け寄ってきた。

「サメラ。大丈夫かい?」
「大丈夫だ。」
「今、ケアルを。」
「ポーションがあるから。魔法は無駄にしたくないしな。リディア、急ぐぞ」
「うん」

詳しい事情はまた次の機会だ。山頂でモンク僧が戦ってる。加勢しに行くぞ。
鋭い眼光を宿したサメラはリディアを掴み戦地にまた飛び込んだ。

サメラとリディアが山頂に再び辿り着いた頃、一人のモンク僧が大きなボムと殴り合っていた。


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