なんだかんだでファブール山脈の膝元にたどり着いてしまう。眼前に広がる分厚い氷の壁に、サメラはアイテムで溶かしきれるかと、目算を立てていた。アイテムの在庫を思い出し、的確な場所を探していたら、隣で音を聞いた。 「ファイア」 小さな炎はじりじり氷を溶かすのかと思ったら、角を持つ獣が火の中から表れて、炎に変え盛大に溶かす。炎の中に違う影が見える。あれが伝来でしか聞いたことのない炎の幻獣、イフリートなのだろうか。あれ、なんか見えるけど……周りの反応がないことに疑問があるが、見えないなら見えないふりをしていく方がいい。突っ込んだら負けだと、本能が行っている。 「サメラ?どうかしたかい?」 「なんでもない。見間違いだ。……あーギルバート?」 瞬く間に氷は溶けて、通れるようになり、リディアは誉めてー。と言わんばかりにサメラに駆け寄ってきたので、サメラもそれに応えて、目一杯可愛がってやる。つい、この間幼い団員が入ったと聞いたのに。つきりと胸が痛んで、サメラは唇を噛んだ。 「サメラ?」 「なんでもない。気にするな」 ほら、高い高い。とサメラはリディアを肩車して、山登りに打ち込む事になった。先頭をサメラが歩き次点をギルバート、そしてローザ、セシルと並び歩いていた。ざりざり。と土踏む音ばかり響いていたがリディアがサメラに話しかけた。 「サメラって凄いねー。こーんな大きな剣を持って。」 「そうか?」 「そうだよー」 「練習用だが。」 サメラには速さはあるが、力がない。だから、常日頃から鍛錬として重みを身に付け力としている。のであるが、リディアは私の弓と一緒だねー。と嬉しそうにはしゃぐ。 「リディア、弓。」 「あ。うん。」 背中の弓と矢筒から矢を一本取り出してサメラに渡せば、サメラはキリキリと弓を引き、背後遠くから駆け寄る魔物を狙い撃った。 「ありがとう」 「サメラすごーい。ローザとおんなじぐらいすごーい!」 「あっ。こら!暴れるな。」 「サメラ、危ないわよ…って行っちゃったわ…」 フラフラ頭を揺らされても、昔とったナントヤラ。足場をヒョイヒョイ飛びながら、サメラは山頂近くまで登り、目が回ったとかないとか。 前 戻 次 ×
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